白黒絵画「火のトンネル」完成 原爆の威力、平和の尊さ訴え 長崎・銭座小6年生

原爆の恐ろしさや平和の尊さを訴える「火のトンネル」を制作した児童たち=長崎市、市立銭座小

 長崎市銭座町の市立銭座小(平川敏博校長、141人)の6年生24人が、原爆の恐ろしさや平和の尊さを訴える白黒絵画「火のトンネル」(縦約3.2メートル、横約6.6メートル)を完成させた。児童らは「平和の大切さを忘れないでほしい」と話している。
 「火のトンネル」の制作は、人を大切にする心を育もうと約20年前から続く同校の伝統行事。入学以来、被爆遺構を巡り被爆体験を聞くなど平和学習を重ねてきた集大成として、6年生が取り組んでいる。例年、8月9日に同校で開く平和祈念集会で披露しているが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で制作を延期し、11月中旬から約1カ月かけて仕上げた。
 絵は、原爆のおぞましさを表現する白黒の色調。模造紙24枚を貼り合わせ、墨汁と筆で描いた。児童がこれまでの学びを振り返り「原爆の威力」「差別」「家族の大切さ」など六つのテーマで表現した。
 「差別」のデザインは、児童らが昨年11月に被爆者の中村由一さんから聞いた体験を基にした。中村さんは、被爆の影響で髪が抜け「はげ」とあだ名をつけられた。児童たちは、目や口など表情のない人たちが中心の一人を取り囲む様子を描いていじめを表現。坂本湊優さん(12)は「中村さんが受けたいじめの悲しさや苦しみを伝えたかった」と説明する。
 被害の甚大さを表現したきのこ雲や、山王神社(坂本2丁目)の一本柱鳥居などの被爆遺構、平和を願う灯籠も描いた。
 作品は、同校正面玄関に18日まで展示している。神﨑智哉君(12)は「戦争を繰り返さず、核爆弾をつくらないでほしいと気持ちを込めた。(絵を見て)戦争をすると何が起こってしまうのか考えてほしい」と呼び掛けている。

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