川相イズムを継承する〝猛虎のヒール、嫌われ役〟は出現するか

猛虎の防御網再建に努めた川相昌弘臨時コーチ

あとは誰が〝ヒール役〟を買って出るか――。1日に打ち上げられた阪神の宜野座キャンプで約3週間にわたって指導した川相昌弘臨時コーチ(56)の存在は、ライバル球団にはどう映ったのか。「効果があったか否かはこれからですよ。それは思わぬ副産物で判断できるかもしれない」と指摘するのは二軍監督時代の氏の指導を知る巨人OBだ。

昨季まで3年連続12球団ワーストの失策数だった猛虎の防御網再建へ、三顧の礼をもって迎えられた名伯楽の指導ぶりは、那覇でキャンプ中の宿敵の球団関係者の耳にも入っている。「さすがだなと。これまで阪神は練習中のノックでミスしても、そのまま〝流して〟次のノックに移っていたみたいですが、全体の流れを止めてでも、もう一度、できるまでやらせるようになったと聞いています」(前出OB)と敵でさえ、今季の阪神の防御網は確実に向上するものと踏んでいる。

一方で実際にどんな化学反応が起き、収穫を得られるかは今後次第ともいう。なかでも、鍵を握るのは〝悪役の出現〟だ。前出OBがこう明かす。「川相さんが二軍監督時代に言っていたことですが『選手同士でミスを咎める空気が出てきたら、いい傾向。チームにおいて誰かしら〝嫌われ役〟となれる選手がいる。そういう人間がいるチームの守りは総じて固い』とも言ってました」

選手同士で各自のプレーを咎める環境が醸成されれば、コーチが口うるさく小言を言う機会も減り、代わりに〝嫌われ役〟となる当事者はもちろん、周囲のポジションにつくナインの緊張感や集中力はより高まる期待が持てるからだという。

「巨人でも今は遊撃で坂本が実際に年齢の上下に関係なく言っていますし、ソフトバンクで言えば小久保さん(現ヘッドコーチ)がその流れを作り、今では松田がそれを受け継いでいますよ」(前出OB)

阪神でもそんな人材が出てくれば、守備力はより頑強になる可能性が高いというわけだ。果たして猛虎の野手陣から、チームのために耳の痛い小言をあえて同僚に言い続けることのできる人材は現れるのか。猛虎における川相イズムの浸透度は今後、こんな側面からも推し量ることができそうだ。

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