周東、増田、中田…120試合なのになぜキャリアハイ残せた? データで紐解く“理由”

ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】

打撃成績が向上し“鬼に金棒”、周東佑京が与える「無形の力」とは?

2020年シーズンは新型コロナウイルス感染拡大の影響で変則日程となり、120試合と例年より23試合少なかった。そのため本塁打や打点、勝利数といった「数」を積み上げる記録は結果を残すのが困難だった言える。しかし、その「数」の記録でキャリアハイの成績を残した選手たちもいる。そこで、昨季にキャリアハイかつリーグトップクラスの数字を残した選手をまとめてみた。

2020年にキャリアハイの成績を残した選手の成績

いずれの選手も、これまでのシーズンベストを残した年に比べ、出場試合数は軒並み少ないか同程度。それにも関わらず、キャリアハイの成績を残した。今回は、ソフトバンクの周東佑京内野手、西武の増田達至投手、日本ハムの中田翔内野手の3選手をピックアップ。データから見えてきた活躍の秘訣について迫っていく。

ソフトバンク・周東佑京の月別成績

昨季50盗塁を達成した周東。実は開幕から1か月以上経過した7月までに記録した盗塁数はわずか「2」だった。しかし、8月に10盗塁を決めると、そこから3か月連続で2桁盗塁をマーク。シーズン50盗塁だけでなく、前人未到の「13試合連続盗塁」など一躍球界を代表する選手になった。なぜ盗塁数がぐんと増えたのか。その理由は昨季の月別成績から読み取ることができる。

周東は2019年、「代走の切り札」として名を轟かせた。俊足を武器に侍ジャパンに選出されるなど、走塁技術はすでに一級品であったと言える。しかし、出塁しないと当然盗塁もできない。2019年の打率は.196。打撃面での成長が欠かせなかった周東は2020年、バッティングでも躍動する。徐々に打撃成績を伸ばし、9・10月は打率、出塁率ともに3割を超えた。四球数も2019年より大幅に伸び、出塁率は10・11月に.353をマーク。打撃成績の向上によって出塁が増え、盗塁数も増えた。

昨季終盤にはリードオフマンとしての地位を確立。今季はさらに注目が集まる。周東が出塁することで、相手バッテリーも盗塁を警戒するため速球中心の配球になりやすい。したがって、続く打者も狙い球を絞りやすくなる。周東がチームに与える「無形の力」は大きく、それだけにソフトバンクの日本シリーズ5連覇に向けて大きなカギを握ることとなりそうだ。

西武・増田達至の1点リード時における被打率の比較

西武・増田の数字に表れる接戦での集中力、“レベチ”だったハム・中田

昨季に新人王を獲得した平良海馬投手とともに、西武の勝利の方程式を担った抑えの増田。シーズンを通して安定した投球を披露し、キャリアハイとなる33セーブを挙げ、自身初の最多セーブを獲得した。球団のセーブ記録も更新し、キャリアに華を添えた1年ともなった。

成長は数字に現れた。昨季は自身初となる「無敗」でシーズンを終えた。打たれれば一転、負け投手になるリスクと隣り合わせのクローザー。さらに黒星なしでの最多セーブ獲得は、佐々木主浩氏、武田久氏に次ぐ史上3人目の快挙だった。

別の数字にも、活躍の秘訣が滲む。上記の表は、1点リード時における増田の被打率だが、昨季は2割を切っている。2019年は被打率.319だったことを考えると、僅差の場面での安定性が増したと言える。実際に昨季は複数失点を喫した試合はない。張り詰める緊迫感の中、好投を続けたことが自身初の最多セーブにつながったのではないか。また、増田はオフにFA権を行使した上での残留を宣言。これからも西武の勝利を守り続けていくこととなりそうだ。

2020年の球場別本塁打数

日本ハムの中田はプロ13年目を迎えた昨季、最多打点のタイトルを獲得し、本塁打もリーグ2位でキャリアハイとなる31本をマーク。出場試合数は、30本塁打を放った2015年と比較して24試合少ない119試合となったが、なぜ試合数が減ったにも関わらずキャリアハイの数字を残せたのか。

まずは球場の特性という視点から見ていきたい。日本ハムの本拠地・札幌ドームは、球場の広さも球界トップクラス。加えて高さ5.75メートルのフェンスがそびえ「本塁打の出にくい球場」としても知られている。

昨季の球場別本塁打数を比較すると、札幌ドームでは全60試合で75本。パ・リーグの本拠地球場の中でも群を抜いて本塁打数が少なかった。その札幌ドームで中田は昨季15本塁打をマーク。これは、自身が札幌ドームで1年間に放った本数としても自己最多の本数であった。これまでの中田とは「レベチ(レベルが違う)」であることが伝わってくる。

また、中田の量産には、本塁打と打点の2冠をめぐって火花を散らした、大阪桐蔭高の後輩でもある楽天・浅村栄斗内野手の存在が大きかったのではないだろうか。両選手はどの月も拮抗した打撃成績を残し続け、タイトル争いは最終盤までもつれた。結果的には4打点、1本塁打差という僅差で中田が最多打点、浅村が最多本塁打とタイトルを分け合った。今季もパ・リーグを牽引する2人の右の大砲のバッティングから目が離せない。(「パ・リーグ インサイト」小野寺穂高)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

© 株式会社Creative2