長崎・中村知事 県政の展望<6> 観光 近隣リピーターに活路

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本県の観光客と観光消費額の推移

 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界文化遺産登録や、クルーズ船客の増加などが追い風となって、長崎県の観光消費額は2018年に過去最多の3778億円を達成。観光立県を目指す中村県政にとって3期目の前半は順調な滑り出しだった。
 だが、任期の折り返し地点を迎えた20年から新型コロナウイルス感染症が世界的にまん延。インバウンド(訪日外国人)獲得の目玉だった国際クルーズの寄港は激減し、二つの国際定期航空路線も運休したまま。大打撃を受けた観光関連産業の立て直しを含め、県は戦略の練り直しを余儀なくされている。
 「新たな国際定期路線の開発、クルーズ船の受け入れ体制の整備といった交流人口の拡大を地域の活性化に結び付けていくような対策に力を注ぎたかったが、そのような予算が組めない状況は非常に残念だ」。16日の新年度当初予算案の会見で、知事の中村法道は無念さをにじませた。
 19年に272回だったクルーズ船の寄港回数は、20年は14回に激減。長崎港松が枝埠頭(ふとう)に大型客船2隻が接岸できる2バース化は20年度に国の事業で始まることになったが、国境を越えた移動が制限されている中で、国際クルーズ再開のめどは立っていない。国際定期航空路線の誘致にも影響は及んでいる。19年1月には長崎と香港を結ぶ定期路線が就航。既存の長崎-上海線の増便も決まったが、いずれも運休している状態だ。

コロナ禍で国際クルーズの寄港がストップしている長崎港=長崎市

 「コロナがなければ昨年7月に台湾との定期路線が決まる予定だった」。新規路線の開拓を進めていた県の担当者は落胆を隠さない。それでも収束後を見据え、ウェブや会員制交流サイト(SNS)を使って個人客に本県の魅力を発信する「デジタルプロモーション」に力を入れると前を向く。
 観光関連産業を取り巻く環境が変化する中、県は新たに策定する観光振興基本計画(21~25年度)で、観光まちづくりの推進、安全・安心対策や観光産業の高付加価値化-など五つを柱に据える方針。コロナの感染拡大で「近場で少人数の旅行」がトレンドとなった今、観光振興課は「県民の県内旅行と九州圏からの誘客促進が全体の底上げとリピーターの獲得につながる」とみる。
 民間の調査では、本県は九州圏内からの旅行者よりも関東、関西圏からの割合が高い傾向が出ている。こうした分析を踏まえて、県は南九州や中国地方の市場に触手を伸ばしつつ、リピーターの獲得に向け、自宅から1~2時間圏内の近隣を旅行する「マイクロツーリズム」に活路を見いだそうとしている。
(文中敬称略)