衝撃的だった“ロッテ澤村拓一”の「幕張剛腕伝説」 嵐の如く過ぎた日々を振り返る

レッドソックスに移籍した澤村拓一【画像:パーソル パ・リーグTV】

9月8日のロッテで初登板、衝撃の3者三振デビュー

澤村拓一投手は日本時間2月17日、海外フリーエージェント(FA)権を行使してボストン・レッドソックスに移籍することを正式に発表した。澤村は昨年9月8日にロッテに移籍してから22試合に登板し、0勝2敗13ホールド1セーブ、防御率1.71をマーク。チームが苦しんだ終盤に救援陣の要となる活躍を見せ、「パーソル CS パ」進出に大きく貢献した。

「パーソル パ・リーグTV」の公式Youtubeチャンネルでは「澤村拓一 『幕張豪腕伝説2020』《THE FEATURE PLAYER》」と題し、澤村を特集している。今回は動画とともに、パ・リーグに歴史を刻んでくれた右腕の活躍を振り返っていく。

9月8日、入団会見を終えたばかりの澤村は日本ハム戦に登板した。1点リードの6回表、緊迫した場面でマウンドへ。ユニホームが間に合わなかったため福島明弘打撃投手の「106」番のユニホームを着用するほど急な出番となったが、動じなかった。

先頭の渡邉諒内野手を空振り三振に仕留めると、巨人でチームメートだった大田泰示外野手に対してもボールを低めに集めて空振り三振を奪う。圧巻の投球に球場中がざわつく中、ビヤヌエバ内野手からも空振り三振を奪い、3者連続三振。パ・リーグファンに「澤村拓一」の名をとどろかせたデビュー戦となった。

この試合を「パーソル パ・リーグTV」の公式Youtubeチャンネルでも「澤村拓一『名刺代わりの3者連続K』《THE FEATURE PLAYER》」として特集している。その後も快投を続けた澤村は移籍後8試合連続で無失点。巨人時代には3軍も経験した男が、新天地で文字通り”開花”した。

短期間でチームの精神的支柱に 結果と背中で後輩たちへ示したものとは

澤村は打者に対して真っ向勝負で挑み、雄叫びをあげるほど気迫を全面に押し出す投球スタイルが印象的だ。その情熱は選手やファンにも伝わっていたことだろう。そして、入団してわずか数か月でチームの精神的支柱となっていった。

象徴的な一戦がある。ロッテはシーズンも大詰め、「パーソル CS パ」進出へ向けて負けられない戦いが続いていた。10月29日のソフトバンク戦。8回に登板した澤村は1失点し、リードを1点に縮められていた。そして最終回、抑えの益田直也投手と田村龍弘選手がまさかのバッテリーミス。サヨナラ負けで首位ソフトバンクに痛恨の3連敗を喫した。

試合後、責任を感じてうずくまる田村の元に真っ先に駆け寄ったのは澤村だった。自身の登板に悔しい思いはあったに違いない。しかしチームや田村のためを思い、一番に田村の元に寄り添った。精神的支柱として前に立ち、背中で見せる姿は多くの若手選も伝わったことだろう。実績だけではないところでも、澤村の存在はチームの「パーソル CS パ」進出に大きく貢献したと言える。

重要な一戦で先輩から受けたバトン“燃えないワケがないでしょう”

11月、ロッテは2位・西武と一進一退の攻防を繰り広げていた。迎えた11月5日はフトバンクとの一戦。この日の先発は澤村の中大野球部時代の先輩でもある美馬学投手だった。試合は3対1でロッテが2点リードして迎えた8回、2死2塁のピンチを迎える。打席には、代打・デスパイネ。一発が出れば試合は振り出しに戻ってしまう。

ここで、井口資仁監督は澤村をマウンドへ送る。落とせない一戦で、かつてのチームメートでもある美馬から受けるバトン。こんな場面で燃えないわけがなかった。美馬が祈るように見つめる中、澤村は2球で追い込む。そしてカウント1-2からの4球目、152キロのスプリットを投じデスパイネを空振り三振に抑えた。

三振を奪った澤村はベンチに戻り美馬とグータッチを交わすと、ようやく笑みをこぼした。ここでリードを守り切ったロッテは直後に追加点を挙げ勝利。2位・西武に食らいついた。「パーソル パ・リーグTV」の公式Youtubeチャンネルでは「【超力投】澤村拓一 “このマウンド”で『燃えないワケがないでしょう』」として、その一部始終をまとめている。

ロッテでの活躍によってMLBのスカウトの評価も急上昇した。澤村自身もかねてより夢見ていたメジャーの舞台。ロッテ側も海外FA権を行使することを認め、その交渉の行方は大きな注目を集めていた。そして日本時間2月17日、ついにレッドソックスと契約合意したことを正式発表した。澤村の武器である力強いストレートと150キロを超えるスプリットにさらに磨きをかけ、更なる進化を遂げることに期待したい。

多くのファンを熱狂させ、多くの選手に背中で”強さ”を示した澤村。パ・リーグに在籍した期間はわずか数か月だったが、背番号「57」が残したインパクトは大きなものだった。これからも澤村がパ・リーグにいたことを誇りに思い応援したい。(「パ・リーグ インサイト」小野寺穂高)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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