金正恩印のお菓子セットから消えた「あの言葉」

毎年その中身が注目を集める北朝鮮のお菓子セット。国家的な祝日に全国の子どもたちに最高指導者の名前で配られるが、デイリーNKは、今年の光明星節(2月16日、金正日総書記の生誕記念日)に配られたお菓子のパッケージを入手した。

2017年の太陽節(4月15日の金日成主席の生誕記念日)に合わせて配られたお菓子セットと比べて、パッケージのデザインに大きな変化はない。「私たちは幸せです」「知徳体」というスローガンに、幸せそうな表情の子どもが飛行機に乗っている絵が描かれている。

ただ、ひとつ変わった点がある。「強盛大国号」という飛行機の名前が消えているのだ。2019年の金正恩総書記の生誕記念日に配られたお菓子のパッケージにもあったが、なぜ今年になって消されたのだろうか。

金正恩氏が、1月の朝鮮労働党第8回大会で経済政策の失敗を公式に認めるほど、経済状況が悪く、国家経済発展5カ年計画も評判は散々。国民の不満も溜まりに溜まっている。

そんな状況で、当局は意図的に「強盛大国号」の5文字をパッケージから削除したものと思われる。朝鮮労働党機関紙・労働新聞からも、強盛大国という用語が減りつつある。
2019年1〜2月には11回使われ、2020年の同期に18回も使われていたのが、今年は4回にとどまっている。

コロナ鎖国で輸入がストップしたことで、加工食品、生活必需品の価格が高騰し、全国的な移動制限の強化、封鎖令(ロックダウン)の乱発などで経済活動が萎縮。ロックダウンのたびに餓死者が出るなど、食糧事情が緊迫の度合いを増している。北朝鮮国民は、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」が再来するのではないかと怯え、効果的な対策を示せずにいる政府に強い不満を抱いている。

そんな状況下、あたかも自国が豊かであるかのようなスローガンを乱発して、火に油を注ぐことになることを当局は恐れているのだろう。

さて、中身の方だが、キャンディ、コメのおこしなど例年のものとさほど変わりない。この製造を巡っては、食品工場が小麦粉、砂糖を買い占めたことで、市場価格を高騰させる結果をもたらしてしまった。だからと言って配らなければ、それはそれで不満を高めてしまうかもしれない。

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