地方×海外の取り組みが加速!ジェトロがしかける、地方発スタートアップが世界とつながるプロジェクトとは!?

昨年、世界と伍する国内スタートアップ・エコシステム*を形成するため、その中核となるスタートアップ・エコシステム拠点都市(計8拠点)が内閣府により選定されたことが大きな話題となりました。

地方では海外と繋がるスタートアップのアクセラレーションプログラム*などが展開されている地域もありますが、実際に地方都市ではスタートアップに対し、どのような支援事業が行われているのでしょうか?

海外への事業展開を見据える地方スタートアップや外国人起業家を増やしたい地方自治体等海外とのつながりに関する需要が増えている今、地方都市の動きに注目が集まっています。今回はそんな地方におけるスタートアップ支援の取り組みを紹介します。

*スタートアップ・エコシステム
起業家、起業支援者、企業、大学、金融機関、公的機関等が結びつくことで、スタートアップを生み出し、優れた人材・技術・資金を呼び込み、その地域で発展を続けること。

*アクセラレーションプログラム
短期間でスタートアップの事業を成長させるための支援プログラム。アクセラレーターと呼ばれる各分野のプロフェッショナルな支援者との定期的な面談を通して、ビジネスをする上で必要なマインドセットやマーケティング戦略、海外展開戦略等を学び、短期間での事業化・事業成長を効果的にサポートするもの。

地方発スタートアップと海外をつなぐジェトロ

日本のスタートアップの海外展開支援で注目されているのが独立行政法人日本貿易振興機構(以下ジェトロ)です。3年ほど前から、海外においてビジネス拡大を目指すスタートアップを対象に、海外現地企業の紹介やビジネスサポートなどを行っています。

近年では、海外での大規模展示会へのスタートアップの出展支援を行うほか、アクセラレーションプログラムを開催したりと、スタートアップ支援の幅も広がりをみせています。

また、今年度からはスタートアップ・エコシステム拠点都市の中でグローバル拠点都市と呼ばれる4拠点所在のスタートアップを対象としたアクセラレーションプログラムを開始しており、地方発スタートアップの海外展開支援も強化しています。

ジェトロスタートアップ支援課 課長の島田さんは以下のように話します。

「地方発スタートアップ・エコシステムの発展と海外展開支援を結びつける事業は、まだ始まったばかりでベストプラクティスを模索している段階です。とはいえ、日本国内の複数の地域を横断したプログラムのため、地域の垣根を超えた参加企業同士での情報交換や、選定都市間でのシナジーなども見られ、ほかにはない付加価値を提供できると感じています」。

また、多くのスタートアップが利用しているジェトロのサービスのひとつの『グローバル・アクセラレーション・ハブ』を世界27か所に持っていることにも触れ、「国内外にまたがるネットワークを駆使して、日本と海外を繋ぐノウハウを地方に提供できるのがジェトロの強みです。また、参加企業にとっては今回のような地域横断プロジェクトは、広範囲のネットワークを築くきっかけにできるという点でもプラスとなるはずです」。

【グローバル・アクセラレーション・ハブ】:https://www.jetro.go.jp/services/jhub/

地方での取り組みを拡大するジェトロ。ジェトロ茨城では茨城県庁と連携してアクセラレーションプログラムを開催し、オンラインで参加者と海外を繋ぎスタートアップの事業拡大を促進しています。また、ジェトロ京都では外国人起業家誘致に向けた外国人スタートアップビザ制度の制定、京都大学との大学発ベンチャー支援や国際産学連携推進といったユニークな活動を行っています。

以下、ジェトロが行っている地方スタートアップ支援の取り組み事例を紹介します。

2021年2月~4月にかけてグローバル拠点都市4カ所50社を世界トップレベルの海外アクセラレーターが本気の支援

2021年2月~4月にかけてオンラインでアクセラレーションプログラムを実施中です。国内スタートアップ・エコシステムのさらなる発展推進を目的に、グローバル拠点都市4カ所50社を対象に、世界トップレベルのアクセラレーター「Techstars(テックスターズ、米国)」、「WiL (World Innovation Lab、米国/日本)」がアクセラレーションプログラムを提供しています。このプログラムはマインドセット、コミュニケーションスキル、戦略立案、人材獲得、資金調達・ファイナンス、マーケティングなどについて、座学、1on1メンタリング、ネットワーキングイベント、投資家に向けたDemoDay等を通じて学びを得るものです。

また、海外展開への戦略立案やコミュニケーションスキルを磨くだけではなく、世界の投資家や海外ビジネスパートナー等と繋がり、資金調達やビジネス拡大の機会を得ることを目指します。

プログラム概要
■日時
プログラム:2021年2月~3月の各週開催
DemoDay:4月初旬~中旬(1日)

■形式
オンライン

■対象分野
ロボット、モビリティ、IoT、新素材・デバイス、医療・ヘルスケア、農業、宇宙、DX・ITサービス 等

参加企業50社の拠点都市内訳
・スタートアップ・エコシステム東京コンソーシアム:12社(東京都、川崎市、横浜市、和光市、つくば市、茨城県等)
・Central Japan Startup Ecosystem Consortium:12社 (愛知県、名古屋市、浜松市等)
・大阪・京都・ひょうご神戸コンソーシアム:13社 (大阪市、京都市、神戸市等)
・福岡スタートアップ・コンソーシアム:13社 (福岡市等)
以下4拠点からの参加企業内訳。個社情報は「スタートアップエコシステム拠点向けアクセラレーションプログラム参加企業一覧(計50社) (653KB)」参照。

2019年、海外イベントでのピッチ風景

【茨城】最先端技術を研究するスタートアップがアクセラレーションプログラムで海外資金調達、事業展開を目指す

オンラインピッチイベント当日の様子

茨城県とジェトロ茨城で開催するアクセラレーションプログラムです。メンターには、主要業種の300以上の専門投資家、 製品スペシャリスト、マーケティング担当者、顧客獲得ストラテジストなど、強力なメンター・ネットワークがありNYを拠点に活動するEntrepreneurs Roundtable Accelerator(アントレプレナー・ラウンドテーブル・アクセラレーター、以下ERA)を迎え、茨城県発スタートアップが海外からの資金調達や海外への事業展開を実現するために開催しました。

本プログラム開催のきっかけは、2019年2月に茨城県の大井川知事がNYに渡航した際にあわせて、ジェトロがERA訪問をアレンジしたことにあります。2019年12月には茨城県とERAの間でスタートアップ支援に関する包括的なMOUを締結し、また茨城県とジェトロがつくば市の協力も得たことで、ERAをNYからつくば市内に呼んで5日間の本格的なアクセラレーションプログラムを実施しました。メンターによる講演や1on1メンタリング、ピッチ資料の作成指導などを繰り返し行ったことで参加企業はピッチ技術と自信を身につけ、その結果ジェトロが実施する他の海外ピッチイベントにも積極的に参加するようになるなど、茨城県発スタートアップの海外展開をより後押しすることに繋がっています。

2019年12月、つくばでのプログラム実施時の様子

2回目となる2020年度は、米国でERAが集めるベンチャーキャピタルや投資家等に直接アプローチすることで資金調達や製品販路拡大に繋げることを狙って、NYに渡航してプログラムを実施する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で完全オンラインに切り替えたため、14時間の時差を踏まえて、プログラムは1日1~2時間程度に分散して実施となりました。日本時間で22時からと遅い時間の開催ではありましたが、連日どの企業も熱心にプログラムに取り組み、特にプログラムの集大成となるオンラインピッチイベントでは、ERAから「参加企業5社は真剣にプログラムに取り組み、非常にピッチ技術が上達した。どの企業が1番上達したか、甲乙つけがたいほど素晴らしいレベルに到達できたと思うし、今後の資金調達やビジネス展開が非常に期待できる。引き続きサポートしていきたい」とのコメントがあったほど各参加企業の取組みの成果が発揮されました。

事前研修中、ワークショップの様子。

更につくば市もVenture Café Tokyoとともに東京でのつくばのエコシステム発信を行うなど意欲的で、2018年度、2019年度とジェトロ茨城も協力しています。こうした茨城県・つくば市の取り組みもあって、「海外を目指してもっと自ら発信していこう」という意欲的なスタートアップが次々と育っています。本格的なアクセラレーションプログラムの価値を活かせる企業が集積しているため、資金調達や協業・進出といった海外展開の具体化を通じて、つくばのエコシステム全体が海外で認知度高ま ることを期待しています。

■事前研修 日程:2020年11月30日(月)~12月18日(金)
内容:KPI設定、ワークショップ、1on1メンタリング、製品販売ピッチ(短いプレゼンテーション)練習

■メインプログラム 日程:2021年1月18日(月)~1月29日(金)
内容:ワークショップ、複数メンターとの1on1メンタリング、海外投資家向けピッチ練習、オンラインピッチイベント実施

■オンラインピッチイベント概要
日時:2021年1月28日(木)22時~23時20分
※ニューヨーク時間1月28日(木)8時~9時20分

参加者:米国を中心とした海外投資家、ベンチャーキャピタル、 ERAパートナー企業等 計70名(+関係者10名程度)

ピッチイベントでの海外投資家からの質問・評価
・この技術には大変興味がある。非常に素晴らしいピッチだった。
・米国市場に参入するには今が良いタイミング。Covid-19 市場も獲得が期待できる。
・どのように製品を販売しているのか教えてほしい。
・どのようなAI で解析を行っているのか。大学や研究所との連携についても興味がある。
・米国市場に展開するにあたって、どの地域のどの分野に焦点を当てているか。

■プログラム参加企業:5社
〇㈱LIGHTz<ライツ>:熟練者の思考や技術等を可視化し、技術継承につなげるAIシステムの開発・提供をしている。

〇サイトセンシング㈱:産総研発ベンチャー。非GPS環境(屋内・地下)での人・車両の位置検知システムの開発・提供をしている。

〇㈱Onikle<オニクル>:筑波大発ベンチャー。自然言語処理AIを使用したプレプリント(査読前論文)プラットフォームを開発。

〇アクシオンリサーチ㈱:利用者の健診データ等から将来の疾病リスクを予測診断するヘルスケアサービスを開発。

〇㈱ネクステッジテクノロジー: 3Dカメラをデバイスに接続するだけで操作可能な非接触型インターフェイスを開発・提供をしている。

【京都】海外起業家の受入環境整備に向けた外国人スタートアップビザ制度の制定や関係機関と連携した京都スタートアップの海外展開支援

ジェトロ京都では、京都府や京都市、京都知恵産業創造の森やけいはんな学研都市、京都大学や京都リサーチパーク等さまざまなエコシステムプレーヤーとともに、インバウンド・アウトバウンドの双方からスタートアップの活動をサポートするエコシステムを作り上げるべく、協力して様々な支援事業を実施しています。

①外国人スタートアップビザ制度

スタートアップビザの発給窓口など外国人起業家の京都での起業を支援するため、海外ビジネスをワンストップで支援する京都海外ビジネスセンター、ジェトロ京都に相談窓口を設置。京都府、京都市、ジェトロ京都などによる支援により、外国人及び留学生の起業を促進し、経済の活性化や一層の国際化、スタートアップの集積を図ります。LinkedInFacebookのページを通じて京都のエコシステムの発信も行っており、4月以降80名以上の外国人からスタートアップビザの問い合わせを受け、既にビザを4件発行しています。第一号はレストランのスマート化サービスを提供する台湾人で、既にFunfoという会社を立ち上げました。

■対象分野
ものづくり(伝統産業、先端産業等)、AI・IoT・情報通信、コンテンツ、ライフサイエンス・ウェルネスなど ※京都府の産業の国際競争力の強化、雇用の拡大、地域経済への循環及び国際的な経済活動拠点としての発展に資する分野
(引用HP:スタートアップビザの申請受付を開始)

②京都大学と連携したオープンイノベーションの取り組み

ジェトロは2020年3月に京都大学と包括連携協定を締結し、京大発スタートアップの支援など、さまざまなイノベーション促進に向けた取り組みを行っています。主に以下のような活動を行っていますが、これらの活動を行うために、2020年5月からは、京都大学産学連携本部に、ジェトロ京都オープンイノベーション支援デスクを立ち上げました。

(1)大学発ベンチャー支援
ジェトロと京都大学は、大学発ベンチャー・アントレプレナー育成への連携支援を行なっています。ジェトロの海外ネットワークを通じた京大発シーズ・ベンチャーの海外進出支援や、海外のベンチャーキャピタルやアクセラレーターとの交流促進に取り組みます。

(2)国際産学連携の推進
国内外企業と京都大学との共同研究、国際連携を促進します。ジェトロのネットワークを通じて、連携や共同研究を希望する企業・研究開発拠点(特に在外企業)等に対して、京都大学が有するインキュベーション施設や関連するスタートアップ、研究者等の関連コミュニティーの紹介などを行ないます。
(引用HP:京都大学との包括的連携推進協定締結および京都大学総長とのオンライン公開対談開催 )

③スマートシティ分野スタートアップの海外展開支援

スマートシティ構想を進める「けいはんな学研都市」の強みを活かしたイノベーションの継続的創出によるイノベーション・エコシステムの構築を支援しています。その一環として、スマートシティに関連した技術を有するスタートアップ企業の海外展開を後押しするイベントの開催や世界最大のスマートシティ展示会に併催のマッチングイベントに出展する企業の募集・支援を行いました。
(引用HP:スマートシティ関連スタートアップ海外展開支援プログラム Smart City Live 2020 Brokerage Event )

④ヘルスケア分野スタートアップの海外展開支援

ヘルスケア分野のスタートアップの海外展開を支援するピッチイベント「HVC KYOTO(Healthcare Venture Conference KYOTO)」を京都リサーチパーク、京都府、京都市らと共催で2016年から毎年実施しています。今年度は、初めてオンラインで実施し、26社のスタートアップがピッチを行ったほか、米国や英国のエコシステムを紹介するセッションが開催されました。前回を大きく上回る延べ約350人が参加しており、注目を集めています。
(引用HP:ヘルスケアスタートアップ、京都から世界にPR、ジェトロなどが開催(日本、米国、英国) )

⑤京都スタートアップ・エコシステムのプロモーション

ジェトロ京都では、京セラやオムロン、ワコールなど世界大手企業が育った京都のエコシステムを世界的なスタートアップ支援機関であるVenture Caféと共にご紹介するKYOTO INNOVATION NIGHT ver.2.0 をオンラインにて開催します。2020年開催時には約500名が参加し、大変活気のあるイベントとなりました。

「KYOTO INNOVATION NIGHT 申込先」
https://kyoto-innovation-night2-20210318.peatix.com/

ジェトロのビジョンと想い 「エコシステムの基盤整備とスタートアップの海外展開を加速するお手伝いがしたい」

日本全体を活性化するには、地方を含めた底上げが必要不可欠です。そのため、島田さんは現在海外との繋がりを求める自治体、スタートアップへジェトロと一緒に取り組みを広げられればと、以下のように呼びかけています。

「アクセラレーションプログラム等をきっかけに、日本のいろいろな都市でスタートアップ・エコシステムの基盤が整備されていくようにしたいです」、「世界に出ていくスタートアップの支援が私たちの最大のミッションなので、海外展開を目指すスタートアップ企業の母数を増やすためにも、地方や多くの機関と連携しながらスタートアップ企業の支援をしていきたいですね。」

「また、まずは日本で成功して海外展開を考えるスタートアップが多いですが、先に海外にチャレンジしそこでの成功体験を日本に持ち帰り、日本でビジネスを立ち上げるスタートアップが出てくることにも期待しています。こういった双方向の繋がりを意識し、これから多くの自治体や関係者、スタートアップの皆様とのご縁を広げて、日本のスタートアップ・エコシステムの環境整備と海外展開に貢献していきたいです。」

ジェトロの取り組みにご関心のある方は以下までお問い合わせください

■ジェトロお問い合わせ
独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)
イノベーション・知的財産部 スタートアップ支援課
TEL: 03-3582-5770
E-Mail: iib@jetro.go.jp
HP: https://www.jetro.go.jp/themetop/innovation/

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