FPが考える年収600万円の人の理想の家計と貯蓄術、3人家族の場合のやりくりは?

令和元年度の民間給与実態統計調査によると、会社員の平均年収は436万円とのこと。年収600万円を超えて700万円以下だけで区切ると全体の6.5%程度とのことなので、年収600万円は、リッチ層に入るといっても良いでしょう。

今回は、年収600万円世帯の理想の家計や注意すべきポイントについてお話します。


年収600万円の人の理想の家計割合は?

年収600万円というと、手取り年収は480万円程度になり、毎月の手取り金額30万円、残りの120万円は、年2回のボーナスで支払われるようなイメージです。今回は、わかりやすくボーナスを考慮せず、毎月の手取り金額40万円として、夫婦に加えて子どもが1人いるケースで見ていきましょう。子どもの年齢によっても理想の家計割合は変わってくるので、今回は子どもの年齢は小学校低学年までの想定とします。

・家賃 手取り収入の25%-30%
・食費 手取り収入の10%-15%
・日用雑貨費 手取り収入の5%
・光熱費 手取り収入の3%-5%
・レジャー費 手取り収入の3%-5%
・雑費(新聞代・被服費など)手取り収入の5%
・通信費 手取り収入の3%-5%
・お小遣い 手取り収入の10%
・教育費 手取り収入の5%
・保険料 手取り収入の3%-5%
・貯蓄 手取り収入の15%-20%

年収が600万円を超えると、家計にも余裕が出てきますが、その分、住居費や子どもの教育にお金をかける傾向があります。住居費も教育費もどちらも金額が大きいので、計画的に資金計画を立てないと老後の費用が準備できないということになりがちです。

また、世帯収入が高いと、加入する保険も増える傾向にあり、保険料が家計を圧迫する傾向にあります。一般的に保険料が手取り収入の5%を超えると家計負担が重くなる傾向にあるので、上記の割合を目安に、優先順位をつけて加入するようにしましょう。

子どもが小さい時がお金の貯め時

子どもが小さいうちは、そんなにお金がかからないため、まだ家計に余裕があります。その分、スイミングや英語、ピアノ、運動教室など、あれもこれもと習い事をさせてしまう家庭も多いかもしれませんが、子どもが成長するにつれてお金のかかり方は加速します。

とはいえ、ひとくちにお金がかかるといっても、子どもの進学コースによってもかかるお金は全く違います。

参考までに幼稚園から大学まで、オール公立の場合には、子ども1人につき約1,000万円ですが、オール私立の場合には、子ども1人につき約2,500万円程度かかります。

最近は、首都圏の高年収世帯を中心に私立受験をさせる家庭が増えているようですが、仮に子どもを中学から私立に通わせようとした場合、小学校4年生から6年生までで塾代が総額300万円程度かかります。また、その後の学費で月額10万円程度はかかるでしょう。

教育費準備の考え方として、子どもが高校を卒業するまでの学費は家計からやりくりし、大学の学費は、子どもが18歳になるまでに、300万円〜500万円を準備するというのが基本です。

ですから、中学、高校と子どもが私立に通う場合には、家計から教育費として月額10万円程度を捻出することができるかどうかが私立に通うことができるかどうかの目安になります。

いくら年収600万円稼いでいるといっても、私立の学校に通う場合には、子どもが小さいうちから、計画的にお金を貯めておかないと、家計が圧迫されてしまう可能性は高いでしょう。

住宅ローンを借りる場合は、年収負担率25%以内が理想

年収が高いと住居費用についても高くなる傾向にありますが、高額な住宅ローンを組んでしまうと家計を圧迫する可能性が高いので教育費同様、気をつける必要があります。

一般的に住居費用は、手取り金額の25%以内に収めるのが理想といわれています。ただし、首都圏のマンションや戸建ての場合、価格が高いので、30%以内までは許容範囲とされています。

実際、金融機関がどれくらいの金額のローンを貸してくれるのかですが、一般的に金融機関が住宅ローンとして貸してくれる金額は、「年収負担率(総返済負担率)」で35%まで(年収400万円以上の場合)。この年収負担率というのは、年間のローン返済の総額を税込年収で除した金額のことをいいます。

ですから、年収600万円の場合、例えば、年収負担率35%、金利0.6%で試算すると、借入可能額の上限は、6,600万円程度になります。

では、仮に、6500万円の物件を購入するとして、頭金500万円、6,000万円のローンを金利0.6%で35年間借りたとしましょう。毎月の返済額は、約15万8,000円になります。そうすると、住居費の手取り金額の割合は39%になります。マンションの場合には、管理費・修繕積立金が加わるので、2万5,000円程度を加えると、毎月約18万3,000円支払うことに。そうすると、住居費の手取り金額に占める割合は45%になります。住居費の理想の割合が25%から30%ですから、大幅に超えてしまいます。

年収が高いと、住宅ローンで借りられる金額も大きくなりますが、家計を圧迫しないラインで考えると、年収負担率は25%以内に抑えたいところです。

年収600万円の場合、年収負担率が25%だと、年間のローン返済額は150万円程度になり、月額にすると、12万5,000円程度になります。

住宅ローンを借りられる金額と無理なく返せる金額は違います。年収が高いからと油断せずに、頭金や返済方法、返済期間、金利等、様々な側面からシミュレーションして、家計を圧迫しないように住宅ローンを組むことが大切です。

「節税」と「資産運用」を意識する

年収が高い場合には、「節税」を意識して、少しでも税金を安くしつつ、手元に残るお金を増やすことも意識しましょう。

まず、「所得控除」を活用することで節税することができます。会社員が活用できる代表的な所得控除としては、

・小規模企業共済等掛金控除
iDeCoの掛金は全額所得控除になり「小規模企業共済等掛金控除」が適用になります。その結果、所得税、住民税を安くする効果があります。

・生命保険料控除
民間の生命保険に加入している人は、「生命保険料控除」が適用になります。2012年以降に契約した人は、介護医療保険料が加わっているため、最高で一般の生命保険料4万円、個人年金保険料4万円、介護医療保険料4万円の合計12万円の控除が受けられます。

・寄附金控除
ふるさと納税を利用して自治体に寄附すると、2,000円を超えた金額については、所得税と住民税から控除(税金から差し引き)することができます。加えて、寄附のお礼として返礼品ももらえます。

・医療費控除
1年間に医療費が10万円を超えた場合、10万円を超えた分の金額が所得から控除されます。自費を含めた病院の通院費や入院費、自宅療養の費用、歯医者にかかったときの治療費や薬代はもちろんのこと、マッサージやハリ治療などにかかった費用、ドラッグストアで購入した医薬品、通院にかかった交通費も含めて最高200万円まで申告することができます。医療費控除は家族の医療費も合算して申告することができます。

・セルフメディケーション税制
1年間に対象となる市販薬を購入し、1年間に支払った金額が1万2,000円を超えた場合、その超えた分の金額(最高8万8000円まで)について所得から控除されます。医療費控除とセルフメディケーション税制は、併用できないため、どちらかを選択します。

また、将来に向けてお金を増やすことも積極的に考えましょう。税制優遇の恩恵を受けつつ、将来のお金を大きく増やせる可能性があるiDeCoやつみたてNISAを活用すると良いでしょう。

例えば、つみたてNISAは、年間の投資上限金額は40万円ですが、毎月3万円を20年間、利回り5%の投資信託で運用することができれば、約1,233万円になります。投資元本は720万円ですから、500万円程度増える上に、つみたてNISAは、20年間の運用益は非課税になるので、利益を丸ごと受け取ることができます。

年収600万円の家庭では、無駄遣いを省き、メリハリをつけたお金の使い方をすれば、投資する金額を捻出することは十分に可能です。年収が高いと油断せず、家計全体のバランスを見ながら上手にお金を貯めていきましょう。

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