【ミャンマー】国軍包囲網築けず、対立激化[政治]

死者50人超、都市部は小売店閉鎖

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3日夜、治安部隊に強制捜査された団体の事務所。武力行使で亡くなった人の葬儀や負傷した人の手当てをしていた(ボランティア参加者の提供)

ミャンマーでは3日、国軍の武力行使が原因とみられる抗議デモの死亡者が少なくとも38人に達した。クーデター発生後で累計50人を超え、欧米などが相次ぎ厳しい非難を表明。ただ国軍との関係が強い中国は一貫して批判を避け、国際的な包囲網は築けない状態だ。4日もデモは全国で続き、対立は激化している。最大都市ヤンゴンでは大手スーパーが全店舗を閉鎖し、料理宅配サービスも安全確保のためサービスを停止した。

国連のブルゲナー事務総長特使(ミャンマー担当)は3日の記者会見で、同日の治安部隊による弾圧で計38人が死亡したと明らかにし、国際社会が一致して国軍への圧力を高める必要があると呼び掛けた。

ミャンマーで先月1日のクーデター発生後、治安部隊の弾圧で死亡したデモ参加者は、分かっているだけで59人に達した。地元メディアによれば、年齢などの詳細が分かっている死亡者の大半が10~20代の若者で占められる。

国連は、5日に予定する安全保障理事会の緊急会合でミャンマー情勢を議論する。しかし、常任理事国で拒否権を持つ中国が現在まで一貫してクーデターへの非難を避けているため、踏み込んだ措置にはつながらないとの見方が強い。中国は、外務省の汪文斌副報道局長が4日の会見でも「隣国として状況を注視している。全ての関係者に自制と、政治と社会の安定を保つことを呼び掛けている」と述べたにとどまり、懸念や非難を示さなかった。

米国はプライス国務省報道官が3日、会見の質疑応答で、人命が多く失われていることを「忌まわしい」と表現し、武力行使を強く非難した。また、抗議デモの取材を理由に訴追されたAP通信のミャンマー人カメラマンら報道関係者の早期解放を強く要請。「報道機関への脅しや嫌がらせの停止を求める」と表明した。

■中国に「建設的な影響力」要請

現在検討中の追加制裁については、「一般市民に打撃が跳ね返る方法は取らない」方針と明言し、国軍に対象を絞った措置になるとあらためて強調した。非難しない中国については「国軍への影響力が強い」と指摘。「ミャンマー国民の意思に沿い建設的に影響力を行使するよう要請している」と述べた。

これまでに、クーデターを受けて制裁を発動したのは、米国、英国、カナダ。いずれも国軍幹部や国軍系企業を対象にした、自国での資産凍結や渡航禁止を含む措置だ。

一方、ロイター通信によると、欧州連合(EU)は4日、軍事政権を支援しないため、ミャンマーの開発計画に対する財政支援を中止する方針を示した。民政移管後に官民を挙げて大型投資を行ってきた日本は、政府開発援助(ODA)の新規案件見送りも視野に入れた検討に入っている。

世界銀行によると、ミャンマーは貧困層が全人口の2割以上。クーデター前の昨年10月には、新型コロナウイルスの感染拡大が原因で稼ぎ頭が仕事をしていない世帯が35%に達していた。さらに抗議のために繰り広げられている市民不服従運動(CDM)によるストライキで、給料を得られない人も出ている。

現時点で国軍の武力行使は止まっていないが、各国には一般国民に打撃を与える貿易、金融取引に関わる制裁は、できる限り回避すべきとの考えもある。

抗議デモに参加する人々=3日、ヤンゴン(NNA)

EUはこれまでにイスラム教徒少数民族ロヒンギャの迫害問題で、ミャンマー産品の輸入関税を引き下げる「一般特恵関税制度(GSP)」の適用見直しを表明してきたが、仮に今回のクーデターでGSPが停止されれば、低所得の労働者が多い縫製業に多大な影響が及ぶ。また、米財務省外国資産管理室(OFAC)の制裁対象(SDN)リストに、ミャンマーの民間企業が加われば、取引する外国企業の事業縮小につながる懸念がある。

■デモ現場で一般人の死亡も

臨時休業しているショッピングモール。手前の地面にはデモの参加者が張ったミン・アウン・フライン総司令官の肖像=2日、ヤンゴン(NNA)

国内では4日も、各地でクーデターへの抗議デモが継続。家具や土囊(のう)でバリケードをつくり、盾を持ってアウン・サン・スー・チー氏らの解放や、民主化政権への回避を訴える市民に、発砲や催涙ガスの使用による武力行使が行われた。

治安部隊の弾圧では、デモ参加者以外の死亡者も出ている。ドイツ系料理宅配サービス「フードパンダ」は3日、最大都市ヤンゴンで業務に当たっていた自転車の運転手(20)が、治安部隊の銃撃で死亡したと明らかにした。フードパンダによると、亡くなった運転手は、けがをしたデモ参加者の女性を救助しようとしていた。

これを受け、シンガポール系のグラブ、日系の「ハイソー(Hi-So)」などを含む料理宅配サービス事業者全てが事業を一斉に中断した。ヤンゴンではこのほか、地場流通大手シティマート・ホールディング(CMHL)が全店舗を休業。「ミャンマー・プラザ」「ジャンクション・シティー」などの大型ショッピングモールも営業を取りやめている。CDMの影響で、銀行は今なお営業を再開していない。