千葉県知事選に過去最多8人の候補者が乱立 政見放送はもはや宣伝広告ツール?

「ワクチン危険」と訴える国民主権党の平塚正幸氏

千葉県知事選(21日投開票)が4日告示され、過去最多となる8人の候補者が立候補した。マイナー視されがちな県知事選がネット上で注目されているのは、何かと話題の個性派候補たちが集結したからだ。“お祭り選挙”といえば、都知事選や国政選挙のハズが、ユーチューブ全盛の中、その垣根は完全に“決壊”した。

県知事ポストは、3期12年務めた森田健作知事(71)の退任が決定。ポスト・モリケンに名乗り出たのは、立憲民主党が支援する前千葉市長の熊谷俊人氏(43)、自民党推薦で元県議の関政幸氏(41)、共産党推薦で元予備校講師の金光理恵氏(57)、医師の加藤健一郎氏(71)、元県立高校校長の皆川真一郎氏(66)のほか、ネット上で話題となっているのは国民主権党の平塚正幸代表(39)、ベーシックインカム党の後藤輝樹代表(38)、「千葉県全体を夢と魔法の国にする党」代表でユーチューバーの河合悠祐氏(40)の3人だ。

平塚氏と後藤氏は昨年の都知事選にも立候補した。都知事選に比べ、千葉県知事選は注目度が格段に落ちるため、供託金300万円を払ってまで、出馬する価値はないというのが、これまでの常識だった。

しかし、昨年から東京・渋谷でクラスターフェスを開催し、「コロナはただの風邪」「ワクチンは危険」と訴える平塚氏が支援者の後押しを受け、立候補した。後藤氏も「全国どこでも選挙があれば出るスタンス。お金があったら出る」と直前に立候補を表明し、都知事選以外では初となる道府県知事選に打って出た。

さらに異色なのは「千葉県をエンターテインメント県にしたい!」とピエロ風のメークを決めた河合氏だ。無名候補が、法定得票数に届かず300万円を没収されるのを覚悟のうえで立候補を決めたのは、ユーチューブの普及でネット選挙がより浸透したことや、都知事選を踏み台に議員になったNHK党の立花孝志代表(53)やスーパークレイジー君・埼玉県戸田市議(34)の成功例を見たからだ。

「この先、衆院選や地方選もある。顔見せ選挙の意味合いはある」と河合氏は“売名目的”であることを否定していない。

千葉県庁前で行われた関氏の街頭演説会には森田知事が応援に駆け付けたが、聴衆の話題となっていたのは、その直前まで街頭演説していた平塚氏や河合氏だった。

年配の男性らは「ワクチンは危険っていうけど、打たないとなあ」「平塚氏の支援者はみんなマスクしていないなあ」と驚きの声を上げ、「白塗りの候補は千葉をエンターテインメント国にするというけど、どんな方法なのか」「千葉県知事選が、こんなにぎやかなのは珍しいなあ」と興味津々だった。

国政政党の推薦や支援を受ける候補以外は、なかなかメディアでも日の目を見ないが、最大の見せ場となるのは、NHKと民放で放送される政見放送だ。

後藤氏は昨年の都知事選で、突然服を脱ぎ出し、オムツ姿で訴え、お茶の間の度肝を抜いた。「今回はまじめにやりました。脱いでいません」と後藤氏は言いながらも「見てのお楽しみ!」と意味深な笑みを浮かべる。河合氏も「(収録では)NHKがピリつきました」と元お笑い芸人らしく、コント仕立ての政見放送になるという。放送はそのままユーチューブ等に転載できるとあって、バズればこれ以上ない宣伝広告ツールとなる。

「熊谷氏の当選で九分九厘決まっているデキレースの選挙に風穴をあけたい。僕と平塚氏、後藤氏で裏選挙みたいに盛り上げられれば、ピエロになった意義がある」と河合氏は不敵に笑う。

この3人を目当てに多くのユーチューバーも現地に駆け付けた。千葉県では、今月7日までだった緊急事態宣言が2週間程度の再延長が濃厚。選挙戦と完全に重なることになるが、地上戦からネット戦に舞台が移れば、さらなる盛り上がりを見せるかもしれない。

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