AIが最適な漁場提案 漁業者支援アプリ「トリトンの矛」 佐世保のベンチャー発売へ

お薦めの漁場を提案するアプリ画面(オーシャンソリューションテクノロジー提供)

 長崎県佐世保市三川内新町のベンチャー企業「オーシャンソリューションテクノロジー」は、人工知能(AI)を使って、最適な漁場の位置情報などを漁業者に提案するアプリ「トリトンの矛」を4月1日に発売する。漁業の生産力向上を図る狙い。AIが蓄積した操業情報を若手に引き継ぐことで技術継承をスムーズにし、後継者不足の解消にもつなげる。

 漁師は一般的に自らの経験や勘に基づき、出漁の判断や漁場の選定を行っている。そのためベテランから若手に引き継いだ場合、漁獲量が著しく減少することがある。また同社の調査によると、地域によってはベテランでも年間の出漁回数のうち4割が空振りに終わるケースがあり、安定的な漁獲は難しい。
 トリトンの矛は、漁業者がこれまで手書きで記録していた漁の日時や場所、水温、魚種、漁獲量といった操業情報を、スマートフォンやタブレットに入力。5年分ほどのデータを蓄積できればAIが解析し、アプリがその日に魚の取れる可能性が高い漁場を推奨したり、出漁判断をしたりしてくれる。
 効率的な漁獲が見込めるため、収益向上や燃料費の削減が期待できる。データは個別管理で他の漁業者とは共有されないが、後進に引き継ぐことで円滑な技術継承が図れるのも利点だ。昨年12月施行の改正漁業法で漁業者の漁獲量報告などが義務化された。そこで、アプリに操業情報を入力すれば自動で報告書を作成できる機能も設けた。
 将来的には市場で取引される魚価の情報も加え、どの魚種をどれだけ取れば、どれくらいの利益が出るのか分かるようにする。取り過ぎを防ぐことで水産資源を守りつつ、これまで以上に収益を確保できるようなシステム構築を目指す。
 料金は操業情報の入力で月額千円。報告書の自動作成まで含めると同2500円。AIによる出漁判断などの機能は別料金。
 水上陽介社長(40)は「資源を守り、漁業を持続可能なものにしていきたい。アプリを通して“水産国日本”の復活に貢献したい」と話した。

「漁業者の収益向上や後継者不足の解消に貢献したい」と話す水上社長=佐世保市、オーシャンソリューションテクノロジー

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