ロックダウン相次ぐ北朝鮮国境地域、今度は新義州郊外も

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新型コロナウイルスの国内流入に神経をとがらせている北朝鮮は、中国との国境に接する地域に対して封鎖令(ロックダウン)を乱発している。

両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)では、今月3日の午後6時からロックダウンに突入し、一切の外出が禁止された。通告から実施までわずか2時間半の余裕しか与えられず、市民は大混乱に陥った。

地元当局は昨年8月と11月、今年1月に続き、4回目となるロックダウンの実施にあたって、市民生活の疲弊、餓死者の続出などを懸念し異議を唱えたが、中央に押し切られてしまった。

恵山から西に500キロ以上離れた平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)に程近い朔州(サクチュ)でも、先月23日から1ヶ月間の封鎖令が敷かれたことが、実施から1週間以上経った今月5日になってわかった。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、その原因となったのは、3年前から行方不明になっていた地域在住の20代半ばの男性の密入国事件だ。

移動の自由が制限されている北朝鮮での行方不明は、単に居場所と安否がわからなくなったということにとどまらず、脱北した疑いのある政治的事案として扱われ、当局の監視対象となる。出稼ぎなどで他地方にいることが判明した場合は、家に連れ戻され、取り調べを受ける。

先月末、国境警備隊が国境を流れる鴨緑江を渡って密入国しようとしていた男性を逮捕した。このあたりの川幅は決して狭くないのだが、男性がどのようにして渡ってきたかは不明だ。ちなみに、この地域にかけられていた清城大橋(朝鮮戦争中に米軍の爆撃で破壊)は長さ約700メートルだった。

この密入国事案はすぐに中央に報告された。1号方針(金正恩総書記の方針)に基づき、国家保衛省(秘密警察)が管轄することとなり、イルクン(幹部)が現地に派遣された。

取り調べで男性は、3年前に脱北してからずっと中国の山奥で働き、両親の背負った借金を返すために脱北し、雑用の仕事をして1日に50元(約830円)を稼いでいたと身の上を話した。そのように過ごすうちに病気になり、蓄えの多くを薬代に使ったが、それでも治らなかったため、家に戻ろうとしたという。

身につけていた衣服からは中国人民元の紙幣が何枚も発見されたが、国家保衛省は、男性が韓国に入国して居住していた可能性もあるとして、保衛部の勾留場に隔離したままで取り調べを続けている。また、中国公安当局に、男性が本当に中国にいたのか調査して欲しいと協力を要請した。

国家保衛省はなぜ「韓国」にこだわるのか。男性がスパイや、北朝鮮に残した家族を連れ出しに来た脱北者である可能性を考慮していることもあるだろうが、コロナの新規感染者数が、中国より韓国のほうが多いことも関係しているだろう。1日の新規感染者が10数人にとどまっている中国に対して、韓国は3〜400人に達している。

また、この男性が発熱や咳など、コロナ感染を疑わせる症状を見せたことから、逮捕時に濃厚接触した国境警備隊員はすべて隔離された。

地域住民に対しても外出禁止令が出され、家の外に一歩も出られない状況となっている。ただし、北朝鮮最大の水豊(スプン)ダムの発電所職員だけは、別の宿舎に隔離した上で、出勤させているとのことだ。