もはや運命の邂逅。聴くしかない…アイマス秋月律子さんの新譜を、リケーブル「秋月」で!

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2021年2月10日は記念日となった。なぜなら、765プロダクション所属アイドル・秋月律子さんの新譜である「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4 09 秋月律子」の発売日だったからだ(もちろん同日である星井美希さん&三浦あずささんのCD発売も大変めでたい)。

「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4 09 秋月律子」

秋月さんのソロアルバムが発売されるのは2015年11月以来。ゆうに5年以上ぶりとなる。現在“アイドルマスターシリーズ”は多くのブランドが勢いを付けてきており、それらも非常に喜ばしいことだが、やはり765PRO ALLSTARSの新しい動きが見られるのは何より嬉しいことだ。僕は気がつけば口から「あー、生きててよかったなあ」とこぼす毎日を過ごしている。

ところで、タイミングを同じくして、中国のオーディオブランド・水月雨(MOONDROP)から2月5日にイヤホン用ケーブルの新製品が発売された。その名を「秋月」という。

水月雨「秋月」¥OPEN(実売想定価格:税抜13,364円前後)

6Nの単結晶銅に金メッキが施された美しい仕上がりのケーブルで、その眩い輝きはまさに秋の満月を思わせる。1万円超えという価格なので、馴染みのない人には「ケーブルだけでそんなに高いの!?」と思われるかもしれないが、実は金メッキケーブルで、この価格に抑えた製品というのは結構珍しい。

僕もお借りしたサンプルを軽くテストしてみたが、編み込まれてクセのつきにくい、しなやかな取り回しの良さに加え、プラグやスライダー部までこだわった造りになっており、満足感のある出来栄えだ。ゴールドの色味がなかなか派手なので好みは分かれるかもしれないが、発色自体は良好。イヤホンのカスタマイズにおいて確かなインパクトを演出してくれることだろう。

なお、こちらのケーブルは2pin(0.78mm)モデルのみの販売であるため、MMCXイヤホンのユーザーなどは注意していただきたい。

それにつけても「秋月」である……。賢明な読者諸氏はもうお気づきだろうが、我らが国民的アイドル・秋月律子さんの姓と完全に一致しているのだ。これが偶然で片付けられようか? 否。僕は確かめなければならない。時を同じくして世に現れた2つの「秋月」、その相性を探る義務があるのだ。

秋月律子さんの新譜とリケーブル「秋月」……P(プロデューサー)として組み合わせない選択肢はない‼︎

早い話が、秋月でリケーブルしたイヤホンを使って、りっちゃんの新ソロ曲をいっぱいいっぱい聴きまくっちゃおうぜってこと! よっしゃ〜〜〜!! やるぞやるぞやるぞ〜〜〜!!!!

■そもそも「リケーブル」とは?

……と、自分勝手にテンションを上げる前に、まずは「リケーブル」という言葉について説明しよう。

リケーブル対応イヤホンは、ケーブルを取り替えることで音を変化させて楽しめる

リケーブルとは、ケーブルの着脱が可能なイヤホン・ヘッドホンのケーブルを交換する行為を指す。本来は断線時などの補修用として搭載されていた機能だが、オーディオファンに広く普及するにつれて、ケーブル変更による音質の違いを楽しむ文化としても親しまれている。

「ケーブルなんかで本当に音が変わるの?」と疑問に思われる人もいるかもしれないが、これがまた馬鹿にできない。まるでイヤホンに魔法をかけたかの如く変わるので、初めてリケーブルをした人はまず驚くだろう。また、ケーブルの長さや太さ、取り回しの良さなど、音質以外の使い勝手も大きく変わるので、その辺りをこだわる人も少なくない(僕もその1人だ)。

近年のハイエンドなイヤホンは殆どがリケーブルに対応しているので、「気合を入れて買った高級機をさらに自分好みにしたい!」という、愛機に対する更なるアプローチの方法として選ばれているわけだ。いわばイヤホンに恋する人のミカタなのである。

というわけで、リケーブルによって秋月を取り付けた5つのイヤホンで、秋月さんの新ソロ曲をそれぞれ聴いていきたい。今回は名前にあやかったネタ的な発案ではあるものの、聴く音楽によってケーブルを変えるといった、奥深いカスタマイズ性を持つ楽しみ方を知ってもらえれば幸いだ。

次ページより律子Pの「秋月」試聴スタート!

1曲目:「灯(あかし)」

まずは1曲目の「灯(あかし)」。秋月さんの純粋な新曲だ。

秋月さんはこれまで「魔法をかけて!」のような恋愛を歌ったアイドル・ポップ的楽曲が多かったが、本楽曲は一転して淑やかなバラード調となっており、秋月さんの今までに無い一面が表現されている。

やはりここはド真ん中で応えたい……ということで、秋月さんの担当カラーであるグリーンのイヤホンの代名詞的存在、Campfire Audio「ANDROMEDA 2020」を用意した。なお、本機はMMCX端子搭載のイヤホンなので、MMCX-2pin変換アダプタを装着しての接続となる(初っ端からトリッキーな取り合わせで申し訳ない)。

「ANDROMEDA 2020」+秋月で「灯(あかし)」を試聴

ANDROMEDAの魅力といえば、深みのある低域から粒立ちの良い高域まで優れた描写力と、それらをまとめ上げるシャープな音像表現だ。俗に「ANDROMEDAの音」と称されるほど印象的なサウンドで、個人的には疾走感のあるジャンルと相性が良いイメージだったが、思えば本腰を入れてバラードを聴き込む機会はあまり無かったかもしれないな、などと考えながら再生してみたら、そんな杞憂はどこへやら、というほどマッチしている。

前半はピアノの伴奏を中心に弦楽器やウィンドチャイムなどが折り重なる構成になっており、特にピアノとボーカルが際立つパートだ。ANDROMEDAの持つ低域のふくよかな重みと伸びの良さにより、温かな空気感がしっかりと表現されている。この辺りの柔らかな響きは秋月による恩恵も大きいだろう。

2番以降はドラムやベース、パーカッションなどが加わり、一気に音数が増え、ステージ上のスケールがグッと広がるような印象だ。これらを支える器量は流石のANDROMEDAで、秋月が持つ解像度の高さも相まって、各楽器の定位や質感が精細に描かれている。

わずか19歳の彼女が抱く想いと、そこに至るまでのルーツを見事に歌い上げた名曲。それを彩るにふさわしいセレクトとなった。

■2曲目:「POP STAR」

続く2曲目は「POP STAR」。

平井堅によるヒット曲のカバーで、一見すると意外な取り合わせにも思えるが、「君」を想うストレートな歌詞や、歌詞中のワードが秋月さんを連想させるなど、ファンも納得の選曲となっている。この曲には、Unique Melodyの「MACBETH Custom」をチョイスした。

「POP STAR」には「MACBETH Custom」をチョイス

MACBETHはスッキリとしていて、バランスが取れたオールラウンダーなサウンド。やや線が細めながら解像感が高く、聴き疲れしにくい音質だ。いわゆるJ-POPの王道的なアレンジがされている同曲とも相性が良く、軽快な歌を耳当たりよく鳴らしてくれた。

個人的な聴きどころは、2番のサビ終わりの間奏〜ラスサビまでの流れ。コーラスの秋月さんも可愛らしく、ラスサビにかけての盛り上がりに合わせて歌声がノッてきている感じも伝わってくる。

こういった打ち込み色強めのポップスは、フラットめでクセの少ない音質のイヤホンで聴くのが好みなのだが、今回のMACBETHは「まさに」といえよう。上記のような細かなポイントにもしっかりフォーカスできる見通しの良さもあり、音質傾向として特別個性が強いわけではないながら、なかなかにお気に入りの組み合わせだ。

余談だが、僕は平井堅さんのファンでもあり、「POP STAR」は今でもよく聴いている楽曲のひとつだ。彼が歌うオリジナルは染み渡るような柔らかな声質が印象的だが、秋月さんのカバーではハリのある元気いっぱいな声質となっており、どちらも楽しく歌い上げているだけに、その対比がまた面白い。同じ楽曲であっても、カバーやアレンジの違いでイヤホンを選び分けてみると、また違った発見があるかもしれない。

3曲目:「My Sweet Darlin’」

3曲目は「My Sweet Darlin’」。こちらは矢井田瞳の楽曲のカバーだ。

ポップなロックサウンドが懐かしく、「Darlin’, Darlin’〜」から始まる印象的なサビは誰もが口ずさんだことがあるのでは。ロックに合わせるということで、JH Audioの「JH11 PRO」を選択。

ロック繋がりで「My Sweet Darlin’」には「JH11 PRO」を合わせる

ゴリッとパワフルな低音とエッジの効いたサウンドが特徴のJH11 PROは、まさにうってつけの組み合わせだ。また、(この曲に限った話ではないが)秋月さんのボーカルの感情表現も見事。

技術的な部分とメンタル的な部分の両方に起因することだと思うが、秋月さんの歌声には表情が映る。たとえば先述の「灯」ではしっとりと歌い上げていたが、この曲ではニコニコと楽しそうに歌っている様がありありと浮かんでくる。そういった細かなニュアンスもしっかりと聴き取れるのは、イヤーモニターを代表するブランドのひとつであるJH Audioならではの再現性なのかもしれない。

それにしても、「アンパンマンのマーチ」の記事でも書いたが、過去の曲を改めて聴くというのは良いものだ。特にこういうラブソングは、幼い頃はあんまり歌詞の意味を理解していなかったりもして、こうして聴いてみると今更ながらにキュンキュンしてしまう。「私だって女の子な部分があるんだな……」などと思いながら、オリジナルを聴いた時には気付かなかったことを探してみるのもいいだろう。

続けて「マジで…!?」「New Me, Continued」をレビュー!

4曲目:「マジで…!?」

4曲目はユニークな曲名の「マジで…!?」。過去に「太鼓の達人」に収録された楽曲で、今回のMASTER ARTIST 4シリーズでは各アイドルがそれぞれソロで歌唱している。

イントロの和太鼓に始まり、随所で響くパーカッションなど、打楽器を中心とした低域のグルーヴ感に富んだ1曲。この曲では、CTMの「CT-300 Pro」を選択した。

秋月は「CT-300 Pro」のウォームな個性を色濃くする印象

CT-300 Proと秋月の組み合わせは、サウンド全体をかなりウォームな方向に持っていった印象だ。もともとCT-300 Proは太く臨場感のある鳴らし方を得意とする機種だが、リケーブルしたことにより、その辺りの個性がさらに色濃くなった。

この曲は全体を通してお祭りのような賑やかさがあり、パワフルなだけでなく、そうした背景部分まで再生しきる分解能の高さが求められる。CT-300 Proは一聴すると低域のインパクトに注目してしまうものの、聴き込むにつれて、奥までしっかりと描写されていることがわかってくる。この辺りは「POP STAR」で選んだMACBETHとは対照的で、まさに味わい重視な音質といったところ。好みは分かれるかもしれないが、個人的には大いにアリだ。

また、秋月さんによる「マジで…!?」は、他のアイドルと比べてももう一段テンションが高いというか、ハコユレの中心で全力で楽しんでいるような勢いが感じられる。冷静沈着な女の子と評されがちな秋月さんだが、「紅白応援V」などの楽曲でもわかる通り、彼女は皆の先陣を切ってグイグイ引っ張っていってくれるような「強さ」を持っているのだ。そういった元気アゲアゲなところも再現してくれるような、パワーを持ったイヤホンで聴きたい1曲だ。

5曲目:「New Me, Continued」

最後は「New Me, Continued」。こちらは同シリーズの新曲で、「マジで…!?」同様に各アイドルがソロで歌唱している。

「変わりゆく景色」「変わらない願い」という歌詞にもあるように、15年の歴史を持ちつつさらに前へ進んでいくという、765PRO ALLSTARSのメンバーが歌うからこそ強く印象に残る楽曲となっている。この曲には、ソニーの「IER-Z1R」を合わせてみた。なお、こちらもANDROMEDA同様に、変換アダプタを使用して接続している。

「New Me, Continued」は「IER-Z1R」で試聴

ピアノソロのイントロから始まりつつ、歌い出しで一気に音数が増え、フワッと視界が開けるような展開で進んでいく。曲調の明るいポップスながらどこか切なさを感じさせる楽曲となっており、卒業ソングを聴いているような感情を抱いてしまう。そんな細かな心の機微を掴んでくれる能力の高さは流石のIER-Z1R。極めて解像度が高く、かつ音楽的な面白みも兼ね備えた同機ならではのパフォーマンスだ。

個人的な聴きどころは、上述した最初の歌い出しのポイント。「はじめよう!」という歌詞に合わせて、そこまでのピアノソロとは一転したスケール感が広がっていく。この視界の広さは、まさに音場感と解像度、そしてどこにフォーカスを合わせてもきっちり音を立ててくれるような、鳴らし方の上手さが求められる。IER-Z1Rが持つシビアな音のディテールに対し、秋月の柔らかなニュアンスが絶妙にエモく組み合わさり、まさに締めくくりにピッタリなセレクトとなった。

ところで、卒業ソングと聴くと「最後」のようなイメージをしてしまうかもしれないが、実際のところは「節目」としての役割が大きいように思う。学校から学校へ、学校から社会へ。今まで培ってきたものを胸に抱いて未来へと進んでいくという、切ないが故にこの上なく前向きなのだということが、ポジティブな歌いまわしや、生き生きとしたエネルギッシュな伴奏からも伝わってくるようだ。「終わり」ではなく「続き」を描いているこの曲は、まさにこのタイミングで発表されるにふさわしい楽曲だといえよう。

■終わりに

……話がアイマス評にそれてしまったのでそろそろまとめに入るが、全体を通して、「秋月」と今回の「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4 09 秋月律子」は相性が良かったように感じる。

イヤホンの機種によって影響の大きさに差異はあれど、おおよそどの機種も「解像感やバランスはそのままに、やや柔らかでウォームな音質にシフトする」という方向性の変化が感じられた。この優しさをプラスした感じの響きが、15周年のエモさに浸っている僕には実にちょうどよかったのだ。楽曲に溶けていくような心地よさに、思わず拳をギュッてしてしまうことも少なくなかった。

しかし、例えば僕がアイマスに出会って1年目だったならば、選ぶイヤホンやケーブルはまた違った結果になったかもしれない。ひとつの楽曲をとっても、聴き手側の心理状況などで最適解が変わっていくのもオーディオの面白いところ。自分の心と音質のチューニングを細かく合わせる要素として、リケーブルは大きな価値を持っている。なかなかマニアックな世界ではあるが、ぜひ皆さんも「音楽を聴くための機種選び」を意識して、愛の詰まったオーダーメイド的な1本を探求してみてほしい。

また、ここまでガッツリとネタにしてしまった以上はちゃんと紹介しておくが、秋月さんの新譜『MASTER ARTIST 4 09 秋月律子』は本当にオススメだ。今までの彼女らしく快活で可愛い一面も持たせつつ、15年目にしてまだ新たな境地があるのかという驚きも与えてくれる。彼女の名刺たりえるCDと言えるはずだ。今まで秋月さんのことをよく知らなかったという人も、ぜひ手にとってみて欲しい1枚だ。

それでは僕は、再びライブに行ける日を楽しみにしながら、自分のマイベストフレンドとなるようなイヤホンで音楽を聴いていきたいと思います。お相手はだいせんせいPこと工藤寛顕でした。