やがて、社会の基盤となる環境発電。日本ガイシとロームが、究極の蓄電ユニットで大きなリード

 今、世界で注目を集めている「環境発電」をご存じだろうか。

 環境発電とは、例えば太陽や照明などの光、機械の振動や電波、熱(温度差)など、私たちの身の回りに存在するわずかなエネルギーを電力に変換して活用することを目的とした技術のことだ。エネルギーを収穫(ハーベスト)することから、エナジーハーベストやエネルギーハーベストなどと呼ばれることもあるが、これらはすべて同じものである。充電いらずで燃料補給も不要。さらには取り替えやメンテナンスの手間も最小限で、長期間にわたるエネルギー供給が可能なため、スマートハウスやスマートグリッド、スマートシティなど、社会のスマート化を背景に需要が拡大しているのだ。

 環境発電市場はまだまだ萌芽期ではあるものの、アメリカの調査会社Kenneth Research社が今年1月14日に発刊した調査レポート「世界の環境発電システム市場・世界的な需要の分析及び機会展望2023年」によると、世界の環境発電システム市場は2023年までに642.37百万米ドルにまで達し、2017-2023年中の期間、10.05%のCAGR(年平均成長率)で成長するとみている。またイギリスのIDTechEx社も2022年時点での環境発電市場を50億ドル以上と予測。製品の売上まで含めると数百億ドル、さらにそれらを活用したサービスまで考えると、市場規模は数千億ドルにも達すると予測している。

 そんな中、日本の企業も動き出した。日本ガイシ<5333>とローム<6963>が、メンテナンスフリーIoT機器実現に向けた技術コラボレーションを発表したのだ。

 この強力なタッグの第一弾として、日本ガイシの超小型・薄型Liイオン2次電池「EnerCera(エナセラ)R」と、ロームの超低消費電流技術「Nano Energy?」を搭載した電源ICを組み合わせた、IoT機器向けの「超高効率の蓄電ユニット」も公開した。同ユニットの最大の特長は、Nano Energy?技術を搭載したことで、ユニットの待機時消費電力を極限まで低減できる点だ。

 IoT機器は必要に応じて動作する。頻度は用途によって異なるが、いずれのIoT機器においても、ほとんどの時間は待機状態なのだ。この待機時の電力を環境発電でまかなうことができれば理想なのだが、環境発電で集められる電力は微量なため、これまでは電力容量の大きいコイン型の1次電池などを使って、消費電力を補完せざるを得なかった。ところが、超低消費技術により、薄型のパウチタイプの蓄電池であっても微量な環境発電だけでIoT機器を動作し続けることができるようになったのだ。

 例えば現在市場に多く出回っている待機時消費電流10μA程度の電源ICを使った場合、わずか112日と、半年にも満たなかった待機時間が、両社のコラボでは6250日、つまり17年以上も持つというのだ。これはもう、待機電力に関してはメンテナンスフリーのIoT機器を実現したといっても過言ではないだろう。

 環境発電は、今後のスマート社会の基盤技術として欠かせないものになるのは間違いない。そんな中、競合他社との技術開発競争から大きく一歩抜きんでた感のある日本ガイシとロームのコラボは、このまま独走体制に入れるのだろうか。今後もIoTデバイスに無限の可能性を提供する革新的な新しいソリューション開発に期待したい。(編集担当:藤原伊織)

日本ガイシとロームがメンテナンスフリーのIoT機器実現に向けて技術コラボレーションを開始

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