【陸上】佐藤友祈 東京で金&世界新へ!!覚悟のプロ転向宣言

笑顔を見せる佐藤は並々ならぬ覚悟を持っている(本人提供)

【Restart パラヒーローズ その壁を乗り越えろ(27)】目指すは“有言実行”だ。パラ陸上(T52)の佐藤友祈(31=モリサワ)は金メダル獲得を公言している。東京大会まで約6か月。あえて目標を口にする裏には、並々ならぬ覚悟が隠されていた。

「僕が思い描いていた障がい者像が崩された」。21歳で脊髄炎を発症。車いす生活となった佐藤に転機が訪れたのは、2012年の夏だった。ロンドン大会でトラックを駆け回る車いすランナーの姿に心を打たれ、パラ陸上の世界に飛び込んだ。

同年秋には「リオデジャネイロ大会に出場してメダルを取る」と練習をスタート。当初は自己ベストを順調に更新してきたが「ある時から更新の幅が狭まってきた」と思い悩むようになった。そこで「もっとベストを更新できるように挑戦していこう」と14年4月に拠点を地元・静岡から岡山へ移し、より一層練習に励んだ。そして、16年リオデジャネイロ大会の400&1500メートルで銀メダルを奪取。「すごいうれしかった。自分のことも注目してくれるようになった」と大きな手応えをつかんだ。

ただ、満足はしていない。リオデジャネイロ大会後に「東京大会で世界新記録を更新して金メダル獲得するためにロードマップを作った」と長期プランを策定。18年に400&1500メートルで世界記録を更新すると、19年世界選手権の400&1500メートルで2冠に輝くなど、着実に進化を遂げてきた。

東京大会は新型コロナウイルス禍で1年延期となったものの「別にモチベーションがガクンと下がったりすることはなかった」とメンタル面に不安要素は見当たらない。1月にはプロ転向を表明。「このご時世、いろんな夢や目標とかを諦めている人が少なからずいるとは思う。自分も正社員からプロになるってことは、それが不安定になるってことじゃないですか。でも、その自分が活躍することで、より多くの人に何か感じてもらえることがあるのではないかな」と腹を決めた。

今まで周囲から否定的な声が聞かれても「どんどん自分の言ってきたことを体現してきた」と自らの意志で道を切り開いてきた。だからこそ「世界記録を更新して金メダルを獲得する」と気合は十分。Vロードを突っ走る準備はできている。

☆さとう・ともき 1989年9月8日生まれ。静岡県出身。21歳で脊髄炎を発症し、車いす生活となった。2012年ロンドン大会を見て、パラ陸上への挑戦を決意。16年リオデジャネイロ大会の400&1500メートルで銀メダルに輝いた。19年世界選手権では、400&1500メートルで金メダルを獲得し、今夏の東京大会代表に内定した。21年1月にプロ転向を表明。個人で活動するチーム名「prierONE(プリエワン)」は、元SMAPの香取慎吾(44)が命名した。

© 株式会社東京スポーツ新聞社