『同一労働同一賃金』中小企業でも4月から 社労士「待遇差 説明できる準備を」

「同一労働同一賃金」への対応に向けた手順

 正社員と非正規社員の間で不合理な待遇差をなくす「同一労働同一賃金」制度が4月から中小企業でも適用される。だが、新型コロナウイルス禍によって対応が後回しになっている企業もあるようだ。長崎市で企業の相談に応じる社会保険労務士は、正社員と非正規社員の待遇差を整理し、説明できるよう準備することを求めている。

 対応が必要なのは、短時間労働者や有期雇用労働者ら非正規社員が在籍する企業。基本給や手当などの待遇は、業務内容や配置転換の有無などを考慮して決まる。待遇差について非正規社員から説明を求められた事業主は、その理由を説明しなければならない。
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 見直しのポイントは、待遇の差が合理的かどうか。合理的な理由があれば、正社員と同じ水準にする必要はない。企業からの相談に応じる社労士の森伸男さんと友野俊英さんは「手当を支給する目的が何なのかを書きだし、整理することから始めて」と助言する。
 待遇差が不合理かどうかは裁判所が判断するが、不合理と判断される可能性が高い一つが通勤手当だ。「通勤に必要な経費を支給する」との趣旨で手当を出すのであれば、雇用形態によって経費が変わるものではないため。出勤日数などを踏まえてバランスを取る「均衡待遇」が求められる。皆勤、扶養の両手当、夏期冬期休暇も同じ。
 賞与は、支給の目的によって判断が分かれる。森さんによると、賞与を「業績が伸びたことへの報償」と考えるならば、非正規社員にも貢献度に応じて支給するのが一般的という。
 一方、賞与の未支給について最高裁が「不合理であるとまでは言えない」と判断した事例も。このケースでは(1)業績に連動して賞与を支給するものではない(2)原告の非正規社員の作業が定型的(3)配置転換が原則ない(4)職種を変更するための登用制度を原告が活用してない-などが考慮されたという。
 企業が対応しないとどうなるのか。森さんは、非正規側が企業を相手に訴訟を起こす可能性を指摘。裁判所の判断次第で、正社員の待遇との差額を支払うよう求められる場合があるとし「訴訟リスクを避けるためにも待遇の見直しをしてほしい」としている。
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 待遇の見直しで、労働者の満足度向上などを期待する声もある。昨年4月から同一労働同一賃金が適用されている県央地域の医療機関。担当者が全15部署の職員から業務を聞き取り、リスト化した。正規の看護師が夜勤に入り、担当患者を持つのに対し、非正規は夜勤がなく、担当を持たないなど違いが明確になった。担当者は「それぞれの仕事の範疇(はんちゅう)がはっきりし、互いに働きやすくなったようだ」と職場の変化を感じている。


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