諫早の未来 市長選政策を読む<6完>V長崎練習拠点 大久保氏「再交渉して決定を」 山村氏「施設配置を見直し」 宮本氏「慎重に検討続ける」

V長崎練習拠点

 「スポーツのまち」を主要施策に掲げる諫早市。トランスコスモススタジアム長崎を核とする県立総合運動公園(宇都町)をはじめ、二つの野球場とサッカー広場などがある「スポーツパークいさはや」(久山町)、市サッカー場(多良見町)などのスポーツ施設が全域に点在する。
 近年、注目されているのが、本明川下流域の競技用ボートの練習拠点化。国営諫早湾干拓事業に伴い、中央干拓地と川沿いの干陸地との間に最大4キロの直線水域が生まれ、国内屈指の練習環境と評価されている。
 地元実業団と高校チームが練習を始めた約6年前、ボートを寄せるスペースやコースを示すブイもなかったが、国や県などの協力で少しずつ動きだした。
 新人で元国交省職員の山村健志(つよし)氏(47)は、同省長崎河川国道事務所諫早出張所長時代の3年間、競技団体の声を聞き、環境整備に動いた一人。「今後の諫早の可能性を感じるエリア。ボートを市民全体で盛り上げようという思いが強い」
 新人の大久保潔重(ゆきしげ)氏(54)は、県議時代から同下流域のボート練習拠点化を後押しした一人。公約には、日本ボート協会のA級公認コース認定による整備を挙げ、「諫干事業の貴重な副産物。スポーツを通して、交流人口の拡大につなげていく」と意気込む。
 現職の宮本明雄氏(72)も国や県と連携し、諫干事業で生まれた新たな地域資源と位置付ける。その上で、同下流域のボート練習拠点を含むスポーツ施設を市内外に広くPRする方策を検討する方針を掲げる。
 懸案は、サッカーJ2のV・ファーレン長崎の練習拠点問題。J1に昇格した2018年、V長崎の要望を受け、多良見町のなごみの里運動公園の拡張を視野に調整。しかし、V長崎側の希望と折り合わず、別の練習拠点を求めることに。その後、大村市内での整備計画も実らず、練習拠点問題は宙に浮いた状態だ。
 宮本氏は「慎重に検討を続けたい」と言葉を選ぶ。山村氏は「V長崎との共存共栄へ、市内のスポーツ施設配置を見直し、なごみの里運動公園で再検討する」と打ち出す。大久保氏は「トップリーダーによる(V長崎との)再交渉が必要。場所は交渉の中で決めるのがいい」と言い切る。
 紆余(うよ)曲折を続けるV長崎の練習拠点問題。これまで同様、諫早市内での練習継続を望む声がサポーターや市民の一部に根強い。多様な地域課題が山積する中、市の未来を考える選挙戦はまもなく火ぶたが切られる。


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