苦悩するギャンブル依存症患者家族 

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長いトンネルをさまよっていたが、家族の関係が回復したと話す女性

 ギャンブルを自分の意思でやめられずに苦しむギャンブル依存症患者のそばで、家族も不安にさいなまれている。本人の借金を肩代わりしたり、誰にも相談できずに孤独の淵に追い詰められているからだ。支援を続ける団体の関係者は、自助グループにつながることが大切だと訴える。

 「死んでくれたらいいのに」−。府内に住む50代の女性は夫に対して言いようのない思いを抱えていた。1歳年上の夫と結婚したのは24歳。結婚して1カ月ほどたったとき、夫の母親が「この子、借金あってんけど」と切り出した。新婚生活を借金のある状態でスタートさせるのはしのびないと、すでに清算してくれたという。

 ■借金返済のため

 しかし、その後も夫はギャンブルを繰り返し、借金を重ねた。女性は貯金を取り崩して生活費に充てた。約150万円の借金があることも分かり、返済のために女性は働きに出た。

 返済中に別の消費者金融の借金も判明。問い詰めると「返すから文句を言うな」と威圧的に言われた。離婚を考えたが、子どものためにと我慢。実家の母親に相談すると「そんな人と結婚したから」と逆に責められた。

 長男が高校1年のころ、夫が長男をパチンコに連れていった。長男は1人でも行くようになり、高校を休みがちに。大学に入学したが授業に出ず、ギャンブル依存症と診断。「子どもまで病気にさせたんか」と夫を恨んだ。

 長男をギャンブル依存症のクリニックに連れて行くと、「お母さんも自助グループに参加してください」と勧められた。意図を理解できなかったが、当時、女性は夫や長男の問題を代わりに解決しようとする「共依存」になっていた。自助グループで同じ苦しみを持つ人に会い、「やっとつらい思いを聞いてもらえる場所ができた」と心底ほっとした。

 ■自分の足で

 だが数年後、住宅ローンを返済しようとしない夫との関係に限界を感じ、離婚を決意して家を出た。それ以降は返済するようになったと知り、「私が家を離れたことで、夫が自分の責任を果たすきっかけになった」と転機を振り返る。

 離婚を思いとどまり、昨年冬には家族旅行に出掛けるまでに関係は改善。旅先で夫は「馬券を泣きながら燃やして、どうでもいいと思ったんや」。夫なりに苦しんでいたと知った。長男は回復施設を経て、今は当事者の自助グループに通いながら依存症に苦しむ仲間や家族を支えている。

 女性は、自助グループに参加して自分の足で人生を生きることが大切だと気付いたという。2018年に「全国ギャンブル依存症家族の会・奈良」を立ち上げ、苦しみを分かち合ってきた。「家族は十分に頑張ったんだから、全てを背負わなくてもいい」と、参加者に心の重荷を降ろすようアドバイスしている。

 ■肩代わり8割

 NPO法人「全国ギャンブル依存症家族の会」(東京都)の16年の調査によると、依存症患者の家族224人のうち、188人に借金を肩代わりした経験があった。金額は「100万〜300万円」が最多の48人。「1千万円以上」は31人に上った。

 家族が尻ぬぐいする限り、依存症は深刻化する。同会事務局は「肩代わりすると悪循環に陥る。問題を本人に『返す』ことが大切だ」と強調。ギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子代表(56)は「家族だけで問題を解決しようとしても難しい。自助グループにつながってほしい」と呼び掛けている。

13日に家族の会セミナー

 「全国ギャンブル依存症家族の会・大阪」は13日、大阪市中央区のドーンセンターでセミナーを開く。

 ひがし布施クリニックの辻本士郎院長と田中代表が講演する。午後2時から。申し込みが必要。問い合わせは電話070(4032)1889。