投手分業制の時代に必要なのはリリーフの奪三振? データで見る最強パ投手陣の成績

楽天・牧田和久、日本ハム・宮西尚生、オリックス・山田修義(左から)【写真:荒川祐史、石川加奈子】】

オリックスを除く5球団は、先発よりもリリーフの方がより優れた防御率を残す

防御率と奪三振数は、投手の能力を測るうえでよく用いられる。前編では近年のパ・リーグにおいて、この二つの数字に一定の相関性が見られることを紹介した。防御率の良いチームは奪三振数が多く、もちろんその逆も然りだ。加えて、ホールド・ホールドポイントも同様に、チーム防御率との相関性が見られることがわかった。

「防御率リーグ1位のチームは、ホールド・ホールドポイントもリーグ1位の場合が多い」。そしてこの傾向は、2010年から2014年までのパ・リーグには当てはまらず、2015年以降に顕著になっている。つまり近年、リリーフの成績がチーム防御率に強い影響を与えるようになってきた、それほどリリーフの担う役割が大きくなってきたということがいえる。

今回はパ・リーグの投手陣の成績を、先発とリリーフに分けて確認。チーム防御率の向上のため、リリーフの重要性がより増しつつある点について深く掘り下げていきたい。まずは、2020年のパ・リーグの先発と、リリーフの成績について見ていこう。

2020年のパ・リーグの先発、リリーフの成績【表:PLM】

オリックスを除く5球団は、先発よりもリリーフの方がより優れた防御率を残した。投球回に差があるとはいえ、とりわけ西武、ロッテ、ソフトバンクの3チームは、リリーフ防御率が3点台中盤以下と優秀だ。Aクラス入りを果たしたこの3球団においては、リリーフ陣が大きな強みとなっていたことがうかがえる。

また、西武は先発陣の防御率がリーグ最下位、奪三振率も唯一の5点台とやりくりに苦しんだが、リリーフ陣の白星はリーグ最多、黒星も唯一の1桁だった。すなわち西武の救援陣は、「試合を左右する重要な局面での登板が多く」、なおかつ「敗因となるケースが少なかった」ということ。ブルペンに課題を残すシーズンが続いていたが、救援陣の整備は急速に進んでいるようだ。

なお、先発陣の防御率が3点台だったのは、オリックスとソフトバンクのみ。どのチームも先発が完投したのは5試合から1試合だった。先発には先発の重責があるのは言うまでもないが、この状態では、リリーフ陣の献身なくしてはもはやシーズンを戦い抜けなかったと考えられる。投手力の観点だけで言えば、先発陣もさることながら、リリーフ陣がずば抜けて充実していたソフトバンクがリーグ優勝を果たしたのは、自然な流れかもしれない。

リリーフの奪三振率も注目すべき要素

それぞれの奪三振数、奪三振率を見ていくと、リリーフ陣が388.1イニングで387奪三振というソフトバンクの充実ぶりがやはり目につく。ただ、防御率がリーグ5位の楽天と6位の西武を除く上位4チームは、いずれもリリーフ陣の奪三振率が8以上だった。チーム全体の奪三振数がリーグ5位のロッテも例外ではなく、リリーフ陣の奪三振に関しては十分に高い数字を記録している。チーム防御率良化には、リリーフの奪三振率も欠かせない要素のようだ。

ここからは、過去の例を参照していきたい。2010年から2019年にそれぞれリーグトップの防御率を記録したチームの、先発とリリーフの成績は以下の通りだ。

2010年から2019年にそれぞれリーグトップの防御率を記録したチームの、先発とリリーフの成績【表:PLM】

2010年の日本ハムでは、防御率・奪三振率ともに、先発とリリーフの間に大きな差はなかった。しかし、2011年以降の各チームにおいては、奪三振率の面でリリーフが先発を大きく上回り、2012年以降は防御率も、おおむね同様の傾向にある。防御率リーグトップのチームのリリーフ陣は、安定感と奪三振能力の双方が優れているケースが多いようだ。

また、リリーフが防御率2点台、あるいは奪三振率8以上を記録したのは、それぞれ6回。リリーフ陣がイニングを上回る奪三振数を記録したシーズンも3回あったが、その全てが2015年以降のソフトバンクによるものだった。この期間にリーグ優勝2回、3連覇含む日本一4回を達成しているソフトバンクの強さからは、やはり防御率・奪三振能力ともにずば抜けたリリーフ陣の奮闘ぶりが見えてくる。

ここまでリリーフばかりを取り上げたが、先発の意地が垣間見える数字もある。2011年以降の各チームは、平均投球数がいずれも95を上回っており、平均投球回は全ての年で5.50以上だった。先発がしっかりとイニングを消化し、リリーフに過度の負担がかからないからこそ、チーム全体の防御率も優れたものになった、という考え方もできそうだ。

リリーフの充実ぶりが王者の条件に?

なお、2010年から2012年までの各チームにおいては、リリーフ陣の出番がなかった試合(先発が完投した試合)はそれぞれ15試合以上あった。以降その数は激減し、2017年以降の4年間では4試合以下となっている。近年のパ・リーグにおいては、チーム全体が優れた防御率を記録するためには、リリーフ陣のフル稼働が欠かせない状況になっているようだ。

近年パ・リーグのポストシーズンにおいては、ソフトバンクが無類の強さを誇っている。ここまで見てきたリリーフ陣の成績では、ソフトバンクはいずれも図抜けた数字を残しており、それがチームの強さの一因であることは疑う余地がない。

チーム防御率・奪三振力の向上、ひいてはリーグ優勝のために、リリーフの防御率、奪三振力は非常に大きな要素となってくる。花形と言われる先発の安定感、すがすがしい奪三振はもちろんのこと、今後ますます重要性を増していくだろうリリーフの仕事ぶりに関しても、これまで以上に注目してみてはいかがだろうか。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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