離島留学生の学生寮「しまなび舎」完成間近 奈留の多世代交流拠点にも

完成間近の「しまなび舎」のオープンスペース。古民家の梁を残したつくりになっている。後列右の多田さん、前列右から山下さん、深町さんの3人が島ナビ隊=五島市奈留島

 県内外から五島市の長崎県立奈留高に進学する離島留学生を受け入れる学生寮「しまなび舎(や)」の完成が近づいている。寮以外にも、奈留島に暮らす小中高生の学習支援や多世代交流の拠点として、島民有志でつくる協議会が運営。今月末のオープンに向け、各事業を担当する「島ナビ隊」の若者たちも準備を進めている。

◆最 多
 同校は2018年度から離島留学制度を導入。全校生徒29人中15人を留学生が占め、18年入学の1期生6人は全員の大学進学が決まった。一方で毎年、ホームステイ先の家庭の確保が難しい状態が続いていた。そこで島民らは19年、学生寮などの運営を手掛ける「奈留しまなび協議会」(山口幹生会長)を設立した。
 しまなび舎の開設資金として、インターネットを通じた募金や、島民と島出身者から直接寄せられた金額は計1千万円余り。同協議会は昨年11月、島民から譲り受けた古民家の改修工事に着手した。今月下旬には9部屋の個室や共有スペースなどが全て完成する見込み。留学生の食事作りや清掃などを担うハウスキーパーも募集している。
 学生寮の存在は離島留学生の安定的な受け入れにもつながる。現時点で、新年度に奈留高への入学が決まっている留学生は12人(男7、女5)で過去最多。山田倫範校長は少人数教育や英語学習に力を入れた成果が表れ始めたとみており、「寮がなければ新たな留学生の受け入れは難しかったので、非常に助かっている」と話す。寮には男子生徒6人が入居する予定だ。

◆融 合
 しまなび舎は留学生の寮だけではなく、地元の子ども向けの学習塾や、高齢者や社会人を交えた交流拠点としての機能も持つ。これらを主導するのは、市地域おこし協力隊として採用された「島ナビ隊」。福岡県出身の深町菜摘さん(28)と多田兼進さん(22)、東京都出身の山下桃花さん(22)が1月に着任し、今月下旬に来島する男性1人を加えた計4人で活動する。
 学習支援は主に、海外での教育支援活動を経験してきた深町さんが担当。通常の塾に加え、地域の魅力や課題を調べる体験学習も取り入れる考えで「教育を通じて地域を元気にしたい」と語る。寮での生活支援などを担う多田さんは「高校生で心の悩みなどもあると思うので、寄り添っていきたい」。山下さんは交流事業をメインに担当し、「若い人のエネルギーと、大人の経験や知恵を融合させたい」と意気込む。
 しまなび舎の竣工(しゅんこう)式は今月22日に開催する予定。29日から学習支援事業が始まり、留学生は4月初旬に入居する。山口会長は「完成が近づいてひと安心。多くの人の協力で有言実行できた。島ナビ隊の活動を見守っていきたい」と期待を寄せる。

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