巨人・原監督流“デッド・オア・アライブ作戦” 581日ぶり復活の野上が開幕一軍に急浮上

巨人・原辰徳監督(62)流「デッド・オア・アライブ作戦」が炸裂した。左アキレス腱断裂の大ケガから復活した野上亮磨投手(33)が、9日のソフトバンクとのオープン戦(ペイペイドーム)の7回から581日ぶりの“一軍登板”。2回2安打無失点に抑え、開幕一軍候補に急浮上した。その一方でギリギリまで選手を追い詰め、力を発揮させる指揮官の手法が改めて鮮明となった。

いきなりヤマ場を迎えた。2点ビハインドの7回、先頭打者はオープン戦8打数5安打と絶好調の真砂。野上は直球とカーブで追い込むと、最後は直球で空振り三振を奪った。

続く栗原に右前打を許したものの、佐藤直を三振に仕留め後続を断つと、続く8回にも2奪三振。2回2安打4奪三振無失点で2019年8月6日中日戦以来の一軍マウンドを降りた。

右腕の復活投に指揮官は「まあまあ、コントロールは良かったでしょうね」とうなずいた。宮本投手チーフコーチは「コントロールがいいんで安心して任せられる。開幕一軍? 半分(50%)くらいはあるんじゃない」とロングもこなせるリリーフでの起用を示唆した。

今後は登板機会の関係でファームでの調整となるが、一軍首脳陣にしっかりと名を刻んだ。もっとも裏を返せばこの日の登板は、野上にとって“ラストチャンス”だった。

17年オフに西武からFAで加入もローテに定着できず、19年10月に左アキレス腱断裂の大ケガを負った。必死のリハビリで復帰したが、昨季の一軍登板はゼロ。年俸は1億2000万円ダウンの3000万円(推定)まで落ちた。

若手の突き上げもあり、一軍登板のチャンスはそうそう巡ってこない。それでも右腕は「一日もムダにしなかった」とキャンプ中、投げ込みと走り込みを行い結果で応えた。

それでも指揮官から用意された舞台は、日本シリーズで2年連続4連敗を喫したソフトバンクが相手だ。ただ「考えられる最も高いハードルを用意して、そこを越えられるかどうかを見るのが原監督流。野上は西武時代にソフトバンクから先発11勝を挙げていて、しかも地元(福岡・太宰府出身)登板。これでソフトバンクに通用するなら戦力になるけど、ダメだったらそれで終わりということ」(球団関係者)。

キャンプ中、原監督は野上に「必ずチャンスは与える」と約束していた。「結果で応えたかったし。まず無失点というのができたので一歩進めたかなと思います」と右腕は“生還”を喜んだ。

もっとも崖っ縁の状況に変わりはなく、今後も背水の戦いが待ち受ける。原監督のモットーは「プロは弱肉強食」。野上にとって一度の失敗も許されない、ギリギリの戦いが続く。

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