【店頭トレンド発信】解析! 「ココカラファイン東京新宿三丁目店」/現役店員も思わず唸った、特長と強さのポイント

【2021.03.10配信】ココカラファインは2020年12月、ココカラファイン東京新宿三丁目店をオープンした。『体験と発見』をコンセプトに掲げ、美容やトレンド情報を中心に発信し、新しい価値を提供する、業界大注目の都市型店舗だ。昨今では、都心の新店が掲げるコンセプトとして、『体験』や『発見』を印象づけるものが多くなっており、テーマやイメージが被る店舗も増えてきた(マツモトキヨシ池袋part2店、B.B.ON日本橋店など)。ココカラファイン東京新宿三丁目店ならではの魅力はいったい何なのか。ドラッグストアに勤務する登録販売者の視点から考察し、ドラッグストア店員と顧客、双方の目線からレポートする。(記事=登録販売者ライター・「梨さん」)。

1、スケールド級のトレンド専用フロア

一番の強みは1階にあるトレンドに特化した売り場だ。

売り場といってもフロアの一角につくる小ぢんまりとした特設コーナーではない。1階のフロアすべてがトレンドを追った専用コーナーになっている。現在は新型コロナウイルス対策をテーマに、PCR検査キットやマスクを展開。マスクは売れ筋商品のほか、38色の色柄マスクが並んでおり、その日の気分やメイクに合わせてマスクのオシャレができるよう、マスク生活に合わせた新しい提案もされている。

このトレンド専用フロアの大きなポイントは『桁外れの売り場スペースと訴求力の強さ』だ。

ドラッグストアの多くはフリースペースやエンドというものが存在する。これらは季節や流行りに合わせて商品の入れ替えが頻繁に行われる売り場を指す。例えば、春は防虫剤コーナーだったところが秋はカイロコーナーに、夏は日焼け止めコーナーだが冬は保湿クリームコーナーになっている…といった具合だ。お客様の目に入りやすいように入口付近で展開されることが多い売り場だが、限られたスペースでしか商品展開ができないため、思ったようにディスプレイ出来ないことが多い。また、駅前店など小さな店舗では小規模での売り場づくりを強いられるため、アピールしたい商品が目立ちにくく思ったような売り上げが立たなかったり、お客様に売り場そのものに気付いてもらえず場所を聞かれてしまったり…と何かと問題点の多いポジションであった。

ココカラファイン東京新宿三丁目店では、フロア全体をフリースペースとしての役割を与えたことで陳列された商品の訴求力が格段にアップしている。商品の展開範囲に制限がほぼなくなったことでオリジナリティあふれる売り場づくりも可能であり、ポテンシャルを秘めたフロアになっている。環境や流行りに応じて、フロアを改装レベルで作り変えられるのも大きなポイントだろう。

ワンフロアを贅沢に使ったこの手法は、入店の第一歩から楽しめるアイデアが散りばめられている。また店員側が悩んでいたフリースペースの問題点もうまく解消している。思わず唸ってしまう着眼点とテクニックはコロナ終息後に真価を発揮するのは間違いないだろう。

2、疑似メイクを楽しめる化粧品売り場とフルラインで揃えられるスキンケア売り場

次に目を引いたのは化粧品売り場だ。

3階メイクアップコーナー、4階スキンケアコーナーに分かれており、ここでも一つのカテゴリ(コーナー)に対してワンフロアをまんべんなく使えるような手法が取られている。

キレイで華やかな売り場を保つため、ついで買いを誘うようなランドリー展開(※1)を殆ど採用せず、通路を広く確保し、歩きやすい売り場を維持している。各階の入り口にはランキングコーナーを設置。注目アイテムが一度にチェックできるようになっている。

メイクアップコーナーではバーチャルメイクモニターというサービスが導入されている。

ここでの大きなポイントは『スキンケアブランドをフルラインで買えるようメインアイテムは概ね取り揃えている点』だ。
例えば、口コミで大人気のクレンジングバームDUO。洗顔や化粧水、乳液なども生産しているスキンケアブランドだが、ドラッグストアの多くではクレンジング以外の取り扱いはほとんど見かけない。自分が勤務する店舗でも取り扱いがないのだが、当店舗ではDUOシリーズのフルラインが購入できる。このように単品でしか見かけなかったブランドアイテムを同店舗ではシリーズで揃えられる。
この点はドラッグストアの強みとして大変大きい。実は店側が各ブランドをフルラインで用意するのはかなりハードルが高い。店側の都合で推奨品だけバラエティ豊かに取り揃えしてしまうのはありがちなことだし、話題ブランドはとりあえず売れ筋に絞って定番(※2)採用することも多い(DUOシリーズはここに当たると思われる)。

ブランドによって取扱品目に差を作らない方針は顧客にとって嬉しいポイントであり、コンセプト通り、今まで知らなかったラインナップを「体験と発見」ができる売り場となっている。

取り扱いブランドはドラッグストアならではのものも多いが、ラインナップの豊富さを見ると、同業他社のシェアより百貨店のシェアを狙いに来ている印象を持つ売り場だった。
特にスキンケアフルライン展開は店舗のコンセプトをしっかり理解し、売り場に反映させている点にとても感心した。品揃えは売り上げによって左右されやすく、維持が難しい。オープン後もフルライン展開を守れるか、様子を見守っていきたい。

最後に

ココカラファイン東京新宿三丁目店。店舗内のサービスに目を奪われがちだが、床に案内掲示を映したり、エスカレーターがキレイに発色したりと店舗全体で仕掛ける華やかさの演出にも余念がない。

建物の外には大型のデジタルサイネージ(電子看板)を設置し、建物全体デザインすることで、まるで美容のアミューズメント施設が出来たようなインパクトをもたらしている。

新宿に軒を連ねるドラッグストアの多くは、インバウンドマーケティング中心としたものばかりで、店舗間で差が生まれにくい現状があった。今回、ココカラファインが新形態の店舗をオープンしたことで競合店との差別化が起き、新宿エリアのドラッグストアもようやく面白い方向に動き出した。

JR新宿駅東口から徒歩2分とアクセスしやすく、今後東京の観光地として人気が集まるのは間違いないだろう。

※1ランドリーバケツのような什器に商品を山盛りにして陳列する方法。通路に置くことでついで買いを促し売上単価をあげる効果を持つ。
※2カテゴリごとに決められた陳列コーナー。安定した需要を持つ商品の陳列場所。

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