震災から10年…小泉純一郎元首相が力説「原発推進の大義名分は全部ウソ」

脱原発を訴えた小泉元首相

小泉純一郎元首相(79)が10日、都内で開催された「ITトレンドEXPO」(主催イノベーション)で講演した。東日本大震災での福島原発事故を契機に脱原発の旗手となった小泉氏は「ピンチはチャンス。変化にいかに対応すべきか」と訴えた。

「日本の歩むべき道」とのタイトルで特別講演した小泉氏は、10年前の福島原発事故を振り返った。

「4基目が爆発したら半径250キロの住民は避難しなければいけないと想定された。東京も入る。住民約5000万人が避難しなくちゃいけない。避難しろって言ってもできない。自分なりに勉強していくと、日本の原発は安全、コスト安い、CO2を出さないクリーンエネルギー。これが原発推進論者の3大大義名分で、全部ウソだとわかった。総理の時、どうして気が付かなかったのか」

小泉氏は高速増殖原型炉もんじゅ(福井・敦賀)が1兆1000億円を実質上、税金をかけながらも廃炉となったことや原子力行政が「安全より収益第一」の方針を取っていたことなども挙げ、いまだ使用済み核燃料の最終処分場のメドが立っていないことに「日本ではとてもできない」と危機感を募らせる。

菅政権は昨年、2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目標に掲げ、自然再生エネルギーに注目が集まる一方、原発の再稼働も不可欠とされている。

小泉氏は1973年の石油ショックを教訓に「石油の値段はどんどん上がったが、日本はいかに油を使わないかで、省エネ技術が発達し、環境先進国となった。ピンチをチャンスに変える努力が必要だ」と説いた。

原発事故から10年、カーボンニュートラルにシフトした今こそ変革の時として、「さまざまな技術をいかせば原発ゼロは極めて現実的。原発にかける金を自然エネルギーにかけた方がはるかに夢のある話」と訴えた。

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