「リハビリの時間が一番大事」 ロッテ大隣2軍投手コーチが自身の経験から得た教訓

ロッテ・大隣賢司2軍投手コーチ【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

指導者として3年目、毎日が勉強の日々「まさかプロ野球でコーチをするとは」

「選手」から「コーチ」に肩書きが変わって3年目。ロッテ・大隣憲司2軍投手コーチは「いや~、本当に選手の時の方が楽でしたね」と言うと、大きな笑みを浮かべた。

自分が最高のパフォーマンスを出せるように考えていた選手時代とは変わり、コーチとなった今は「2軍だけでも20人近くいる」という投手1人ひとりと向き合う毎日。「人それぞれ本当に違うので、いろいろな話をしながら、選手の状況を見ながら、『こういう指導の方がいいのかな』『こういう言い方の方がいいのかな』と探るのが本当に難しいですね」と話す。

12年のプロ生活のうち、11年をソフトバンクで過ごした。2012年に自己最多12勝を挙げると、翌年は第3回WBCメンバーに選出。だが、同年に黄色靱帯骨化症と診断され、手術を受けた。特定疾患から無事カムバックを遂げたが、故障に泣かされ、2017年のシーズン終了後に戦力外通告。12球団合同トライアウト、入団テストを経て、ロッテで再起に懸けた。

ロッテでは主に2軍で過ごし、1軍で投げたのは2試合。そのうちの1試合は、引退発表後に古巣ソフトバンク戦で投げた“引退登板”だった。「本当に怪我がたくさんあって、フルシーズン戦ったのは数えるほど」というキャリアに幕を下ろすと、飛び込んできたのはロッテからのコーチ就任の打診だった。

「プロで経験させてもらったいろいろな練習方法であったりを生かして、今の高校生や大学生に教えたら楽しそうだな、とは思っていましたけど、まさか自分がプロ野球でコーチをするとは想像もしていなかったです。だから、今でも1日1日勉強しながら、選手がいい方向に進めるように考えていこうという考え方ですね」

大隣コーチ(右)は自身のキャリアから学んだ教えを若手に伝えている【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

「リハビリの時間をどう過ごすかで、結果が出るまでの時間を縮められる」

指導者という立場となり、改めて感じるのは時代の変化だ。今年で37歳を迎える大隣コーチが中高生だった時代は、まだまだ昔ながらのスパルタ指導が色濃かった。だが、自分が受けた指導は今の若い選手たちに通用しない。「教え方や言われ方が全然違う。だんだん変わってきたなと思いますね」と続ける。

「僕らの時みたいに『はいはい』と返事をする感じではなくて、自分の意見をちゃんと返してくる子が多いですよね。それはいいことだけど、間違っていることは間違っていると、しっかり言ってあげないと。ただ、その加減が難しいところ。今はどう伝えるか、どういう言い方がいいのか、それが大事だし、1人ひとり違うのが事実。自分がやらせたい方向や型にはめようとは思いませんけど、『こういうのはどうだ?』と話した時に、選手が『こうやりたいんです』と言った場合、柔軟な対応をしてあげたいと思います。そうしないと、結局選手が迷うだけ。そこは話をしながら、近すぎず、時には厳しく言えるような形を作っていきたいと思います」

現役時代は泣かされ続けた怪我だが、その経験が今となっては指導者としての引き出しを増やしてくれた気がしている。野手に比べ、投手は故障が多い役割。怪我をした後、いかに這い上がれるかが、長くキャリアを続ける鍵でもある。

「僕はリハビリの時間が一番大事だと思うんですね。怪我をしたどうこうではなく、怪我をしてからリハビリの時間をどう過ごすかで、復帰してから結果が出るまでの時間を縮められると思っています。怪我をしたら落ち込むよりも、もう前を向くしかない。その時の状況をどう捉え、怪我の状況も考えながら、自分に何ができるのかを考える時間が大切。だから、キャンプ中も接する時間は短いんですけど、故障中の選手に話しかけにいったり、『この時間が大事やぞ』って伝えていました。本当に悔しい気持ちもあるだろうし、早く戻りたい焦りの気持ちもあるでしょう。そこを自分でコントロールしながら、今するべきことを考えられる選手になってもらいたいなと」

選手にとっては、コーチが発する経験に基づく言葉は心強いに違いない。「そう思ってもらえるとありがたいですけど」と言うと、少し照れくさそうに笑った。

3年後、5年後と長期にわたり優勝争いができるチーム作りを目指すロッテ。その屋台骨を支える投手を育てるべく、選手に寄り添いながら指導を続ける。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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