楽天則本昂に見えた“田中将大効果” 高めの直球をテーマにした理由とは

楽天・則本昂大【写真:荒川祐史】

小山投手コーチ「ポップフライになる確率が高い」

■ロッテ 8-4 楽天(オープン戦・10日・静岡)

3年ぶりの2桁勝利を目指す楽天・則本昂大投手に、“マー君効果”が現れつつある。10日のロッテとのオープン戦(静岡)に先発。5回途中に打球を右膝付近に受けて緊急降板したが、幸い「今のところ大丈夫そう」と軽傷を強調した。4回までは1安打4奪三振無失点の快投を見せ、開幕へ向けて順調な調整ぶりをうかがわせた。

「球数を多くせずに投げられた(56球)ことと、真っすぐで三振が取れたのは良かった」と振り返ったが、この日のテーマの1つは“高めのストレート”だったようだ。小山伸一郎投手コーチは「そこが田中将大を含めて、いま練習している所」と明かした。

実際、この日の則本昂は、何度も145キロ台後半から150キロの高めのストレートで相手打者にファウルを打たせ、カウントを整えた。2回無死一塁では中村奨に対し、カウント1-2からの6球目にインハイの142キロでのけ反らせ、7球目の真ん中高めの145キロで空振り三振を奪った。

小山コーチは「則本ほどの球威があれば、低めを使うことも大事だが、打者が振るか振らないかくらいの高めを使うと、ポップフライになる確率が高い。今日はそれをうまく使えた」と分析し、「高めは(疲労などで球威が)落ちてきた時にはホームランボールになりやすいリスクもあるが、則本も試合で使ってみて納得したようだ」とうなずいた。

田中将に高めの“効用”を聞いた小山コーチが則本昂に勧める

今年の春季キャンプでは、8年ぶりに日本球界に復帰した田中将がブルペンで「次、高めのストレート行きます」、「高めのスライダー」などと予告しながら、高めへの投球を多く練習していたことが話題になった。日本の投手は一般的に「低めに球を集めろ」と金科玉条のごとく教えられる。

その方が長打を食らいにくいとされているからだ。しかし、メジャーリーグは「フライボール革命」に席捲されアッパー気味のスイングで打球に角度をつける打者が増加。投手は、いかに高めをうまく使えるかが成功の秘訣になりつつあるとも言われる。

小山コーチは「田中将が(高めを)使っていたので、『なぜそこへ投げるの?』と聞いてみた。詳しいことは企業秘密だが、球威のある則本に『使ってみたら?』と勧めた。うまくハマってくれたと思う」と語る。

則本昂はプロ1年目の2013年、新人ながら15勝(8敗)を挙げ、田中将らとともにリーグ優勝と日本一に貢献した。以降、毎オフ田中将と自主トレをともにしてきた“チーム田中”の一員。1年目から6年連続2桁勝利をマークしたが、破格の7年契約を結んだ2019年以降は2年連続5勝と低迷している。“師匠”のマー君の復帰をきっかけに、則本昂も復活の狼煙を上げるか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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