【津川哲夫F1新車私的解説】変更少なく苦しいウイリアムズ。ハースと同じく開発の焦点は2022年か

 カラーリングを大きく変更して登場したウイリアムズの新車FW43B。昨年のFW43の今シーズンレギュレーション対処型であり、発表写真は開くまでもプレス用で実車ではないはずだが、おそらく実車もそれほど大きな変更なく現れるはずだ。

 発表された写真のとおりなら、昨年型のパフォーマンスを大幅に刷新すると言うわけにはゆかないだろう。ボディワーク、特にエンジンカバー周りは本来なら今シーズンのトレンドとなるロー・アンド・コンパクトでもっとタイトに絞り込んでリヤウイングへの空気流量・流速の増加と、フロア上面露出面積の拡大が計られなければならないのだが、発表写真からはその努力は強くは感じられない。

2021年型ウイリアムズF1マシン『FW43B』の左フロントサイド

 FW43Bのフロントサスペンションは規則通り、独特なスタイルをそのまま維持している。フロントロワアームの取り付け位置が高く、ロワアームから路面までの空間は大きい。この設定は今シーズンのエアロレギュレーションに対し、一見有利なサスペンションアームの設定に見えるが、アップライト剛性やホイール剛性にとっては決して良くはないはずだ。

 また強いレーキ角(フロアの前傾姿勢)も、ハードサスペンションも昨年同様のようで、こうなると新規則でのフロアとディフュザー規制によるダウンフォースの喪失を補うにはかなりのドラッグは覚悟しなければならないはずだ。

 ウイリアムズもハースF1同様、今年はシーズンを通して無事に走らせることを優先して過度なアップデートはせず、開発の主力は来期2022年の完全新規則マシン開発に向けているのかもしれない。

ウイリアムズF1の2021年型マシン『FW43B』

 昨年後半のFW43は速いマシンと言えない状況だったが、とりあえず安定した走りは見せ始めていた(トップからは数秒落ちではあったが)。

 ウイリアムズに関しては、果たして開幕戦までにさらなる改良型が登場するのだろうかが不明ではあるが、現状ではレギュレーションの変更によりダウンフォースが喪失される今シーズン、ウイリアムズがこのままで乗り切るのはかなり厳しそうだ。

 唯一、ジョージ・ラッセルがこのFW43Bをどこまで乗りこなすかを見るのは面白そうだが。

2021年型ウイリアムズF1マシン『FW43B』の左リヤ

《プロフィール》津川哲夫(つがわてつお)
1949年生まれ。F1メカニックを志して1977年に単身渡英。トールマン、ハース、ベネトンなどのチームでメカニックを勤め、1990年シーズンでメカニックを引退。その後、F1中継でピットレポートやセッション解説、そして雑誌やwebメディアでメカニック経験を活かしたメカニカルな視点でF1の魅力を伝え続けている。

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