カセットテープの生みの親、ルー・オッテンスが94歳で逝去。その功績を辿る

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カセットテープを発明したオランダの技術者、ルー・オッテンス(Lou Ottens)が2021年3月6日に94歳で逝去したことをNRC Handelsblad紙が報じている。

オープンリール式テープに代わる、より安価でコンパクトなテープを探し求めていたルー・オッテンスは、オランダの技術会社“フィリップス(Philips)”で製品開発の責任者を務め、カセットテープを考案した。再生と録音に磁気テープを使用した“コンパクト・カセットテープ”の第1号は、1963年の“Berlin Radio Show”(ドイツに行われている世界最大規模の見本市“国際コンシューマ・エレクトロニクス展”の前身)で初公開。アメリカでは、カセットテープを再生・録音する機械と共に1964年11月に発表された。

当初は、口述記録用として開発されたカセットテープとプレーヤーだったが、その音質の向上に伴い、70年代から80年代にかけて音楽業界でも広く受け入れられるようになり、不格好な8トラック・カートリッジテープやLPレコードに代わる有力な選択肢として普及していく。1979年にソニーが携帯型の“ウォークマン”を発売したことで、音楽を楽しむための最も一般的なフォーマットとなったカセットテープは、コンサートの海賊版からミックステープまで、音楽を録音して共有することを、驚くほど簡単かつ低価格で実現し、数え切れないほどのパンクやロックのバンド、ヒップホップのアーティストたちがその技術の恩恵を受けた。現在までに世界中で販売されたカセットテープの総数は、1,000億本以上と言われている。

1986年に引退したルー・オッテンスだが、後年もフィリップス社と協力して、LPやカセットテープに代わる新たなフォーマットとなる“コンパクト・ディスク”の開発に取り組み、この技術は1982年に初めて市場に導入された。

ドキュメンタリー映画『Cassette: A Documentary Mixtape』(2016年)を監督したザック・テイラーは、NPRの取材に次のように語っている。

「オッテンスは、音楽をポータブルで身近なものにしたいと考えていました。彼は、フィリップス社が他メーカーに、この新しいフォーマットの製造許可を無償で与えるよう提唱し、カセットテープが世界的なスタンダードになる道を切り開いたのです」

この10年で、カセットテープは、限定版やコレクターズ・アイテムなどとしてリバイバルの兆しを見せている。NMEによると、昨年、イギリス国内のカセットテープの売り上げは、前年度の2倍以上を記録し、人気上位のタイトルには、レディー・ガガの『Chromatica』、ヤングブラッドの『weird!』、ファイヴ・セカンズ・オブ・サマーの『CALM』などが含まれている。

Written by uDiscover Team

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