WSS300で3年目のシーズンを迎える岡谷雄太「目標は全戦優勝でチャンピオン!」

 スーパースポーツ世界選手権300(WSS300)クラスで3年目のシーズンを迎える岡谷雄太。2019年に日本人ライダーとして初めてWSS300にフルエントリーし、昨年、日本人ライダーとして初めてウイナーとなった。挫折しそうになりながらも、不屈の精神で勝利をつかみ、さらに上を目指している。そんな岡谷の2021年シーズンの目標は“全戦全勝でチャンピオン!”と言い切る。

「目標と言われれば“全戦全勝でチャンピオン!”です。自分自身にプレッシャーをかけていますし、それくらいアピールして行かないとステップアップできないですからね。タレントカップだけではなく、WSS300からでも道が開けるというところを示していきたいですね」

2020年のスーパースポーツ世界選手権300(WSS300)に参戦した岡谷雄太(MTM Kawasaki MOTOPORT)

 2018年に全日本ロードJ-GP3クラスにモリワキクラブからエントリー。開幕戦ツインリンクもてぎでデビューウインを飾り、チャンピオン争いを最終戦まで繰り広げたが惜しくも2位。ただ、最多勝となる3勝を挙げており、J-GP3クラスでは、他にユーザーがいないピレリタイヤを履いての結果は高く評価されるべきだろう。

 2019年からWSS300に前年のチャンピオンチームと契約し、フル参戦を開始するが、下位に低迷し、予選落ちすることもあった。

「自分自身のライディングなのか、マシンなのか何が悪いか分からなくなっていましたが、2、3戦目のヘレスラウンドのときに、チームに“バイクが遅いから何とかして欲しい”とリクエストしたのですが“普通に走っているよ”との返事でした。ウエットでは調子はよかったけれど、ドライでは厳しかったですね」

カワサキNinja 250SLでトレーニングを行う岡谷雄太(MTM Kawasaki MOTOPORT)

 失意のどん底に落とされた2019年シーズンを終えた岡谷は、カワサキNinja 250SLを購入。桶川スポーツランドでピレリタイヤを履き徹底的に走り込んだ。そこには、Moto3クラスでタイトルを争うことになる小椋藍の姿もあった。

「(小椋)藍は、桶川のコースレコードをどんどん塗り替えていて、すでにやり尽くしている中から、タイムを削っている状態だから、本当にうまいですね。去年、緊急事態宣言が解除されてからは、毎日のように一緒に走っていましたね。先日もレコードをコンマ2秒削ったのですが、さらに上を行かれて悔しい思いをしましたね(笑)」

WSS300に参戦している岡谷雄太(MTM Kawasaki MOTOPORT)/撮影協力:Metal Work YANAKA http://metalwork-yanaka.jp/

 WSS300、2年目は今シーズンも走るMTM Kawasaki MOTOPORTに移籍。アラゴンで初テストを行うと、少し乗っただけで、それまでのベストタイムを2秒も更新。アベレージタイムも上がり、戦っていける手応えを感じていた。

「アラゴンのレースウイークでは、スリップストリームを使って出したとはいえ、2分06秒台まで出すことができました。2019年が2分11秒台だから“何だったんだ!?”という感じでしたね。チャンピオンチームでしたが、チーム内格差が大きかったんですね。対してMTM Kawasaki MOTOPORTは、驚くくらい平等ですね」

2020年のスーパースポーツ世界選手権300(WSS300)に参戦した岡谷雄太(MTM Kawasaki MOTOPORT)

 コロナ禍で8月に開幕した2020年シーズン。開幕戦から上位を走り、2戦目となるポルトガルラウンドのレース2では、勝利を確信するものの赤旗で終了。3位となり初表彰台に上がるが全く納得できなかった。その後は、レース終盤に接触されて転倒したり、岡谷自身が転倒したり、勝てそうで勝てないレースが続く。

「気合い入れて臨んだアラゴンを落として、さすがに落ち込みました。そんなときに同じくスペインをベースにしている(佐々木)歩夢が自転車トレーニングに誘ってくれました。藍や歩夢たちがレースのときは、応援しながら、ひとりでスペインの山を自転車で上り、いい気分転換になりました」

2020年のスーパースポーツ世界選手権300(WSS300)に参戦した岡谷雄太(MTM Kawasaki MOTOPORT)

 メンタル面も充実して迎えた5戦目のカタルーニャ。レース1はウエットで苦戦するものの、ドライとなったレース2は、トップグループに必死に食らいついて行く。そして最終ラップに目の前でクラッシュが発生。これをかわした岡谷は、2番手に浮上。最終コーナーで前を走るライダーを抜き、WSS300で初優勝を飾った。

「WSS300のレベルは年々上がっていると思います。CEV Moto3やイタリア選手権(CIV)、ESBKのWSS300などを走ったライダーが集まっていますので、Moto3に近いものがあると思います」

トレーニングを行う岡谷雄太(MTM Kawasaki MOTOPORT)

 スーパーバイク世界選手権(SBK)併催で2017年より行われているWSS300。マシンは、カワサキNinja 400とヤマハYZF-R3によって争われており、10台は当たり前、ときには20台もの台数によってトップ争いが繰り広げられている。

「600には、何度か乗ったことがありますが全然速いとは思いませんでした。早く1000ccに乗ってみたいですね。ステップアップできれば、速く走ることができる自信しかないですね」

 このシーズンオフも毎日のように桶川を走り込んだ岡谷の瞳は自信に満ちていた。WSS300からWSS600、そしてSBKへステップアップして行く道を切り開こうとしている。

WSS300に参戦している岡谷雄太(MTM Kawasaki MOTOPORT)/撮影協力:Metal Work YANAKA http://metalwork-yanaka.jp/

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