ロッテ佐々木朗、初陣は「結果云々ではない」 元守護神が語る実戦初登板の意義

ロッテ・佐々木朗希【写真:荒川祐史】

「試合で投げられることが全て」

最速163キロの肩書を引っ提げてプロ入りし、2年目を迎えたロッテ・佐々木朗希投手が12日の中日とのオープン戦(ZOZOマリン)でプロ初の実戦登坂に臨む。2番手として1イニングを投げる予定だ。その見どころは何か。現役時代はロッテの守護神として活躍し、今年4月から社会人野球・エイジェックの投手総合コーチを務める小林雅英氏に聞いた。

「実戦初登板に関しては結果云々ではない。仮にいいピッチングをしたからといって、開幕1軍が決まるわけでも今年の活躍度を占えるわけでもない。特に課題もまだない。試合で投げられることが全て」と小林氏は強調。「佐々木朗希がようやくプロ野球選手として第1歩を踏み出す。われわれはその瞬間を楽しめばいいのだと思います」と語る。

思えば長い道のりだ。佐々木朗はルーキーイヤーの昨年5月26日にチームのシート打撃に登板し、最速160キロを計測。あとは実戦登坂を待つばかりだったが、シーズンを通してその時は訪れなかった。仕切り直しとなった今年、春季キャンプから順調に調整を進め、今月5日には本拠地ZOZOマリンでのシート打撃で152キロをマークした。

前日11日は東日本大震災発生からちょうど10年の節目の日だった。岩手県陸前高田市生まれの佐々木朗は小学3年で被災し、津波で父と祖父母を亡くし、実家も失った。「翌日に投げることに、東北へ向けてのエールというメッセージ性はあると思う」と小林氏は指摘する。

現在のフォームに「腕のしなりを使えていない気がする」

昨年に比べると、佐々木朗の投球フォームには多少変化が見られる。動画で見る限り、「昨年の方が、右腕がスムーズに動いていた気はします。今年はテークバックの際に腕が体から離れすぎていて、その分、腕のしなりを使えていない気がする」と小林氏は解説する。昨年のフォームに何らかの問題点があって修正した結果なのか、それとも無意識にこのフォームになったのかは本人と周囲の者しか分からない。

「試合で投げないうちは、本当の意味でプロ野球選手とは言えない」と言い切る小林氏。一方で「昨年1年間は本人の中でさまざまな葛藤があったと思う。初登板は結果が良ければ自信にすればいいし、悪かったとしても次へのステップと考えればいい」と語る。

いずれにせよ、過去の誰よりも速い球を投げる可能性がある19歳がプロの実戦マウンドに上がり、敵に対してボールを投じる。それだけでもファンはワクワクを抑えられないだろう。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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