21日告示の諫早市議選 コロナ禍 悩める選挙戦

消毒液、マスク、体温計、連絡先の記入票などをそろえた市議選予定候補の後援会事務所=諫早市内

 3月21日告示、28日投票の諫早市議選。現職、新人計30人前後が立候補準備を進めているが、支持拡大と新型コロナウイルス感染対策との両立に腐心する。感染防止策を徹底した活動の一方で、握手や集会開催は軒並み自粛。限られた環境で自身の政策を有権者にどう伝えるか-。感染状況次第で投票率に影響を及ぼす可能性があり、不安を抱えながら手探りの活動が続く。

 1月下旬の市議会全員協議会。選挙戦前後の感染防止に向けた自主的な指針策定を巡り、意見が交わされた。「防止策の徹底は当然」とし、各自の良識的な判断に委ねられた。
 複数の予定候補の後援会事務所を訪ねると、入り口での検温と手指消毒、連絡先の記入、未使用マスクを設置。中には、テーブルにプラスチック製ついたて、ウイルス除去効果のある次亜塩素酸入り空気清浄器を設置。関係者以外の入室自粛要請や屋外にテントを張った“青空事務所”にする徹底ぶりも。「感染者を出したら、政治生命にかかわる」。各予定候補とも神経をとがらせる。
 支持拡大策も様変わり。政策をまとめたリーフレットを手に、地盤とする地域の企業や支援者に自らの政治姿勢を訴える手法が主流だったが、対面での会話やリーフレットの手渡しを控え、ポスティングにとどめる人もいれば、マスク着用の上、活動を続ける人も。大規模集会は見送り、少人数の会合に出向くスタイルが多い。
 「集会や握手ができないのが一番痛い」。現職の一人は活動報告書の配布や後援会員への電話、街頭でのつじ立ちなどに転換。「暗中模索、五里霧中。工夫して乗り切りたい」
 別の現職は3月初め、150人規模の励ます会に踏み切った。入場前の検温などを徹底し、いすの間隔を1メートル余り空けて配置。「ぎりぎりまで悩んだ。実際に会わないと理解してもらえないし、(有権者の)顔が見えないと不安になる」。対面での反応を浸透度を測る目安にする様子。

間隔を空け座席を配置して開いた市議選予定候補の励ます会=諫早市内

 「顔と名前を知ってもらうことから始めているのに、出だしから差をつけられている」-。厳しい表情を浮かべるのは新人予定候補たち。一方、別の新人は「従来の方法を知らないから、逆に状況に合わせて動ける」とマイペースだ。
 告示後の動きも頭を抱える。個人演説会の自粛、選挙カーによる運動時間の短縮をはじめ、選挙運動員の食事は、炊き出しから弁当配布に切り替える陣営も。街頭演説の回数増や街頭演説場所に支援者を集める方法などを模索する。
 現職の一人はこう語る。「大音量で名前を連呼したり、大人数をホールに動員したりせず、有権者に届く方法を考え直し、選挙の原点を考える機会になった」
 4年前の市議選投票率は58.22%で、2005年の市町合併後、過去最低だった。市長選や県議補選諫早市区との“同日選”への注目度が高く、市議選の投票率も上昇するとの見方が多いが、3種類にわたる投票の煩雑さから、高齢者らの足が遠のく可能性も指摘される。

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