経験に基づく支援や復興の軌跡 長大広報誌「福島と長崎大学これからの10年」

長崎大が発行した広報誌Choho特別号「福島と長崎大学これからの10年」

 長崎大は今月、広報誌Choho特別号「福島と長崎大学これからの10年」を発行した。2011年3月11日の東日本大震災発生から現在まで、被災地への人材の投入など原爆後障害医療研究所(原研)をはじめ全学的に取り組んできた支援や現地の復興の軌跡を振り返ると共に、今後の被災地の展望も紹介している。

 長崎大は原爆投下により長崎医科大(爆心地から0.5キロ、現医学部)で多くの学生や教員が犠牲になった。その後、被爆者の医療に長く携わり、チェルノブイリ原発事故では医療協力や放射線の影響調査も行った。東京電力福島第1原発事故では、被ばく医療の専門家らが現地に駆けつけ健康リスク管理などに従事。
 福島原発近くの川内村、富岡町、大熊町と包括連携協定を締結して自治体を支援。現地に拠点施設を構え、常駐する教員らが放射線量を測定し、高齢者施設でのレクリエーション、小学生に対して授業を行うなど多角的にサポートを続け、信頼関係を築いてきた。
 特別号はA4判、21ページ。編集責任者の高村昇・原研教授は、昨年9月に福島県双葉町に開館した「東日本大震災・原子力災害伝承館」の館長も務めている。高村教授は「巨大地震、津波、原子力災害という世界でも前例がない複合災害。住民は避難、風評被害、除染した上での帰還などで混乱も経験した」と指摘。「災害に立ち向かい今も続く復興に努力する人の思いを知ってほしい。また、長崎大の歴史や経験に基づく地に足の着いた復興支援も伝えたい」と話している。
 冒頭は、原発事故直後から健康リスク管理などに当たり、福島県立医科大副学長になった山下俊一長崎大名誉教授のインタビュー。続いて川内村、富岡町、大熊町の3首長が登場し、復興の課題などを語った。このほか、長崎大医学部保健学科、教育学部、歯学部の教員や学生らの現地の子どもや高齢者支援の様子も紹介した。

© 株式会社長崎新聞社