【「でっけぇ風呂場で待ってます」脚本担当の人気コント師インタビュー①】ハナコ・秋山寛貴☆ドラマ初脚本で感じたコントとの違いとは?

北山宏光と佐藤勝利がダブル主演を務め、人気コント師たちがリレー形式で脚本を担当していることで話題の銭湯コメディー「でっけぇ風呂場で待ってます」(日本テレビ)。月曜深夜に銭湯で温まるような、ほっこりとした笑いを届けてくれるこのドラマで脚本家デビューを果たしたのは、人気お笑いトリオ・ハナコの秋山寛貴。

ハナコのコントを彷彿とさせる安定の構成力で脚本家としての才能を発揮したにもかかわらず、「自信が持てない…」と謙虚な秋山に、脚本に挑戦して感じたことや、ドラマの撮影現場での裏話などを聞いた。

――最初に脚本のオファーが来た時はどう思われましたか?

「びっくりしました。さらに主演は北山さんと勝利くんだと聞いて、『ドッキリなんじゃないか』と不安になって…(笑)。でも、本当に挑戦するんだと実感してからはワクワクしました」

――いつかは脚本に挑戦してみたいと思われていたそうですね。実際に経験していかがでしたか?

「実際にやってみたら本当に大変で…。甘く見ていたわけではないのですが、もう少しコントで培ったものが生かせると思っていたんです。でも、もう少し経験というか、能力を上げないと自分の好きなものは出しきれないんだなと学びました。もちろんコントの脚本と似ている部分もあるとは思うんですけどね」

――コントとの違いで一番戸惑われたのはどこですか?

「やっぱり最初にぶつかったのは尺です。今回、僕と空気階段の(水川)かたまりくんが脚本初挑戦だったので、スタッフさんからノウハウを教えていただきながら書きました。『30分は大体17、18ページ』と枚数で教えていただいたので、とりあえず1回長い話を書いてみて、『できた!』と思って枚数を数えると13枚くらいしかないんですよ。そこからキャラクターを生かしつつ物語をどう膨らませるかが難しかったです。コントはだいたい5分前後のものを求められて、6、7分になったら削る作業なので、膨らませるということ自体が初めてで、なかなか大変でした」

――人数も多いですしね。

「ユニットコントともまた違う、初めての経験でしたね」

――旬の芸人さんたちがリレー形式でシットコムの脚本を担当するという企画自体もとても面白いと思いました。

「普段、意識し合っている同世代のかが屋の賀屋(壮也)くんと空気階段のかたまりくん、そして尊敬する、先輩のシソンヌ・じろうさんですから。このメンバーでできることにワクワクしましたが、『負けられないな…』とドキドキもしました。自分の回だけSNSが荒れるんじゃないかと不安になって、放送終了後はエゴサしていましたね(笑)」

――反響はいかがでしたか?

「うれしい声をたくさんいただいたのですが…安心しきれない自分がいます。お笑いライブでは、ウケたら『よかった』、スベったら『ダメだった』とすぐに判断できるじゃないですか。ネタ番組は現場にいる方が笑ってくれていれば『ウケたな』と思える。でもドラマの反響はすぐには分からないので、安心するのはもう少し先でしょうね」

――ほかの方の脚本は事前に読まれたのでしょうか?

「読めるものは読みました。最初にじろうさんが書いた第1話の初稿を読ませていただいて、『こんな雰囲気だよ』ということをみんなで共有しました。じろうさんの第1話も初稿から結構変わりましたし、リレー形式だから、『みんなはどう書いたんだろう』ということをずっと気にしながら書いていましたね。勝利くんが演じる梅ヶ丘の家族を出したいと思った時も、誰かがすでに書いていたら使えないので、すぐに連絡して。途中で多少、かぶったこともありました」

――じろうさんが担当した第1話から、梅ちゃん(梅ヶ丘龍大/佐藤勝利)はマグロ漁船に乗っていたというエピソードが出てきたので、キャラクター設定はこれからどうなるんだろうと思いました。

「そうですよね(笑)。(北山演じる松見)芯さんと梅ちゃんの性格を考えた時に、2人の違いを探したのですが、どちらもすごく愛嬌(あいきょう)のあるキャラクターで、バカなんですよね。だからもう、同じタイプでもいいやと思いました」

――北山さんと佐藤さん、お二人が演じる姿を実際に見て、いかがでしたか?

「ソワソワしました。うれしいと思う余裕はなかったですね。北山さんがセリフ回しなどを相談してくださったので僕のイメージをお伝えして、コミュニケーションを取りながら撮影していきました」

――今回、脚本の全体的なチェックを担当したじろうさんが、「秋山くんだけ芯さんの一人称を江戸っ子口調で『あっし』か『おいら』と書いてきたので、毎回直していた」とおっしゃっていたんですが、何か意味があったのですか?

「あれ? 最初は確かに一人称を『おいら』にしていましたが、もともと『おいら』と書いていたのは、じろうさんですよ!(笑)」

――え? そうなんですか!?(笑)。

「最初の頃の脚本で、芯さんが『おいら』と言っていたんです。だから僕はそれに沿って『おいら』にしていたのですが…」

――じろうさんの勘違い説が…(笑)。

「真相はじろうさんに確認してみてください(笑)」

――先ほど、コントの脚本とは勝手が違うとおっしゃっていましたが、秋山さんの担当回には相方の岡部大さん、菊田竜大さんも出られていて、ハナコのコントの面白さも生かされていると思いました。

「そう思っていただけたのならよかったです。やっぱり相方たちは得意なことも分かっていますし、どう動いてくれるのかイメージしやすいので、現場にいてくれて心強かったですね」

――秋山さんの担当回は家族のエピソードがちりばめられていて、見終わった後にじんわり温かくなりました。そこもこだわりだったのかなと。

「最初は意図していなかったのですが、完成したものを見たら想像以上に温かい回になったなという感覚はあります。第3話で芯さんが忘れ物を捨てられないという設定も、優しい芯さんなら忘れ物を面倒くさいと思わずに大切にするだろうなと想像したところから始まっているので、“優しさ”にはこだわったかもしれません」

――第3話では、秋山さんの“手下感”のある演技もよかったです。

「戸塚(純貴)さん演じる竹ノ森(光太郎)の手下・チビの森が意図せずはまり役で(笑)。じろうさんから設定を見せていただいた時から竹ノ森がすごく好きだったので、僕は手下になろうと思ったんです。あとは端本(りほ)さん役の平田(敦子)さんと瀧(薫)さん役の長谷川(忍)さんにもすごく助けていただきました」

――お二人が場の空気を回している感じがしました。

「脚本にない笑いを現場で生んでくれていたと思います。端本さんと瀧さんのペアが、その場の空気でいろいろと足してくださっていたんだなと、放送を見てあらためて感じました」

――次に秋山さんが担当するのは、3月15日深夜放送の第7話ということですが、見どころを教えてください。

「第3話では芯さんの良さを出したかったので、第7話では梅ちゃんの良さを出したいなと。梅ちゃんの家族が『鵬の湯』に仕事ぶりを見に来るという設定なのですが、家族が見に来るから参観日みたいな感じで思わず頑張っちゃう梅ちゃんのかわいらしさが出ているのではないかと思います」

――家族にはいいところを見せたいという気持ちになりますもんね。

「アルバイト先とかに家族が遊びに来た時って、等身大の自分でいればいいのに“やってます感”を出しちゃいますよね。梅ちゃんだったら、なおさらきっちり張り切りすぎちゃうだろうなあと(笑)」

――第7話も楽しみです。今回担当したのは2話分ですが、今後は全話脚本を担当することもあるのではないでしょうか

「どうでしょうか。もちろん想像はしますけど…(笑)。皆さん、どんな生活リズムで書いているんでしょう。本当にすごいですよね」

――最近はたくさんのコント番組があり、そのほとんどにハナコとして出演されています。多忙な中でさらにYouTubeでもクオリティーの高いコントを配信されていて本当にすごいなと。現在の状況をどう感じているのでしょうか?

「いい流れですよね。もちろん今はすごく楽しいです。昨年1年間で、ハナコのコントだけではなく、ユニットコントやテレビでのコントなどさまざまな形を経験させていただいて、意識することも変わってきました。そして今回、ドラマだとまた違うノウハウがあって…。ただ、活動の場が少しずつ広がっていくにつれて、もっと自信が持てるのかなと思ったのですが、全く自信が持てないんです。もともと自信を持てないタイプというのもありますが、経験を重ねるごとに、今まで自分が見てきた人たちや番組のすごさが分かるというか」

――立ち位置が変わるにつれて、視界も広がりますもんね。

「そうなんです。だからもう、ドラマとかも恐ろしかったですよ(笑)。自分の書いたものに自信をなくしているわけでもないのですが、なかなか自信はつかないですね。この作品も、最終回が終わってからゆっくり少しずつ自信につながったらいいなと思っています。そして初のドラマ脚本への挑戦でしたが、演者さんもスタッフさんもみんな優しい、『でっけぇ風呂場』からスタートできて本当によかったなと思っています」

【プロフィール】

秋山寛貴(あきやま ひろき)
1991年9月20日、岡山県生まれ。おとめ座。O型。2014 年、秋山と菊田竜大のコンビに岡部大が加入してハナコを結成。「キングオブコント2018」チャンピオン。「有吉の壁」(日本テレビ系)などに出演中。チョコレートプラネット、霜降り明星と共に出演する「新しいカギ」(フジテレビ系)が4月スタート。

【番組情報】

「でっけぇ風呂場で待ってます」
日本テレビ
月曜 深夜0:59~1:29


【あらすじ 第7話】

両親が仕事の様子を見に来ることになり、張り切る梅ヶ丘(佐藤)。「鵬の湯」のマナーを良くしようと、松見(北山)たちを巻き込んで「銭湯の正しい入り方」というVTRを作ったり、警備員のように厳しく見回りをする梅ヶ丘に、瀧(長谷川)たちは戸惑っていた。そこへ、平川(高橋努)という客がやって来るが、平川は一向に風呂に入ろうとせず…。

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取材・文/石本真樹 撮影/大槻志穂

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