3月下旬、直径数百メートルの小惑星が地球から200万kmの距離まで接近する

地球をかすめる小惑星を描いた想像図(Credit: ESA – P.Carril)

2001年3月、アメリカのLINEAR(リンカーン地球近傍小惑星探査)プログラムによって小惑星「2001 FO32」が発見されました。アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、2001 FO32は日本時間2021年3月22日地球からおよそ200万キロメートル(地球から月までの距離の約5.3倍)まで接近し、時速12万4000キロメートルで通過していくといいます。

2001 FO32の直径は当初約1キロメートルと推定されていましたが、NASAの赤外線天文衛星「NEOWISE」による最近の観測結果をもとに下方修正され、440~680メートルと見積もられています。NASAによると、2001 FO32は傾いた楕円軌道を約2.2年かけて公転しており、最も近い時には水星よりも太陽に近づき、最も遠い時には火星と比べて2倍ほども太陽から遠ざかるといいます。

将来地球へ衝突する可能性がある小惑星は「潜在的に危険な小惑星(PHA:Potentially Hazardous Asteroid)」と呼ばれていて、2001 FO32もPHAに分類されています。NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、仮にサイズが見積もりの最小値だったとしても、2001 FO32は2021年に地球へ接近することが確認されている小惑星のなかで最も大きいといいます。

2001 FO32の軌道(グレー)を示した図。惑星の軌道はピンクが水星、紫が金星、水色が地球、赤が火星を示す(Credit: NASA/JPL-Caltech)

ただ、2001 FO32は発見から20年に渡り追跡され続けていて、今後数百年に渡り地球の脅威にはならないとされています。NASAの地球近傍天体研究センター(CNEOS)で所長を務めるJPLのPaul Chodas氏は今回の接近について「200万キロメートル以内に近づくことはありません」と語ります。なお、次に今回と同じくらい2001 FO32が接近するのは2052年5月で、地球からの距離は約280万キロメートルと予想されています。

NASAでは今回の接近について、サイズと反射率をより正確に理解し組成を推定するための機会と捉え、ハワイのマウナケア山にある赤外線望遠鏡施設(IRTF)を使って2001 FO32を観測する予定です。また、NASAの深宇宙通信網「ディープスペースネットワーク(DSN:Deep Space Network)」を利用して、2001 FO32のレーダー観測を行うことも計画されています。

JPL主任科学者のLance Benner氏は「過去20年間の観測を通して、地球に接近する小惑星のうち2001 FO32と同程度の大きさを持つものの15パーセントが小さな衛星を伴っていることが明らかになりました。2001 FO32には未知の部分が多く、この小惑星を学ぶまたとない機会となるでしょう」とコメントしています。

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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