<社説>空自泡消火剤流出 環境調査に責任果たせ

 周辺住民のみならず県、那覇市も安全性を不安視している。航空自衛隊那覇基地から泡消火剤が流出、飛散した事故で、防衛省は2週間たってようやく、分析調査する方針を示した。 事故当初から空自は、漏れ出た泡消火剤には有害性が指摘される有機フッ素化合物PFOSは含まれていないと強調し、「毒性や損傷性はほとんどない」と説明してきた。しかし、泡消火剤にPFOSが検出されたとの本紙報道を受け、対応を変えた。

 化学物質が基地外に流出し、水質や土壌汚染の可能性がある以上、空自は事故後すぐに分析調査するべきだった。防衛省は環境や人体への影響についての客観的な調査、分析に責任を果たし、地域社会へ説明しなければならない。

 流出事故は2月26日に起きた。那覇基地の燃料保管施設に付設された消火用機材から泡消火剤が流れ出した。基地近くの保育園やゆいレール赤嶺駅構内、国道331号でも泡の飛散が目撃された。

 空自はPFOSの含有を否定し「毒性や損傷性はほとんどない」と説明した。しかし製造元の安全データシートに、流出した消火剤は「危険」と表記されている。注意喚起の表現として「警告」よりも有害性が強い場合に使われる表現だ。

 にもかかわらず、空自は消火剤が基地外に出ないよう水路を止める措置を講じたが、外部に流出した消火剤は回収していない。県民に接触や吸引の回避を呼び掛けるような広報はしなかった。事故直後に本紙記者が採取した泡を京都大の原田浩二准教授が分析した結果、PFOSなど複数の有機フッ素化合物が検出された。

 PFOSなどは発がん性などのリスクが指摘される上、環境中ではほとんど分解されず、長期的な汚染を及ぼす可能性も指摘されている。米国やドイツでは飲み水の目標値を定め規制している。日本でも2010年に製造・使用が原則禁止され、PFOSを使わない非PFOS品への切り替えが進められている。しかし全国にはPFOSを含む泡消火剤はいまだ338万リットルが残されており、廃棄は進んでいない。流出事故の危険は全国的な問題だ。

 泡消火剤の流出事故は昨年4月、米軍普天間飛行場でも起きた。格納庫でバーベキューをして消火設備が誤作動するというお粗末な理由で、泡消火剤が大量に流れ出た。防衛省はその際の調査に携わったが、他山の石とはしなかったのか。環境汚染や人体への影響を軽んじているとしか思えない。

 空自は有害性のある物質が流出・飛散した可能性を重く受け止め、泡がどの程度、どこに拡散したのか特定しなければならない。回収した泡消火剤を分析もしないまま「毒性はない」と結論付けた調査態勢も検証すべきだ。

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