核禁条約発効を報告 故渡辺千恵子さんに

渡辺さんの墓前で、核兵器禁止条約発効などを報告した合唱団員たち=長崎市、延命寺

 長崎原爆で下半身不随になり、車いすで核兵器廃絶を訴えた故渡辺千恵子さん(1928~93年)の命日の13日、渡辺さんの半生を描いた組曲「平和の旅へ」を歌う合唱団のメンバーが長崎市寺町の延命寺を訪れ、渡辺さんの墓前で1月に核兵器禁止条約が発効したことなどを報告した。
 合唱団は被爆者ら約100人で構成。曲は合唱と語りの約30分間で、85年の初演以来、修学旅行生などを相手に250回以上披露してきた。昨年4月には核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせ渡米し、現地で曲を披露する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大で断念していた。
 渡辺さんが眠る墓を団員8人が訪れ、渡米を断念したことに加え、核兵器の開発や保有、使用を全面禁止する核禁条約が1月に発効したことを報告し「核廃絶が始まる第一歩だ」と語りかけた。曲の一部も歌い、渡辺さんに思いを寄せた。
 報告を終えた、団員で西彼時津町の被爆者、長野靖男さん(78)は「原水爆禁止運動に生涯をささげた千恵子さんの笑顔が見えるようだ。条件がそろえば、(核禁条約の)締約国会議に合わせてウィーンで曲を歌いたい」と話した。

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