早々に開花

 会社の近くの公園で、スマートフォンを桜の枝に向ける人をきのう見掛けた。ほころんだソメイヨシノの花を写真に収めている。もうそんな季節か、じゃあ自分も…。統計を始めてから最も早く、14日に長崎で開花が発表された▲遅く咲いたり、長く咲いたりした年は、入学式の頃を桜が彩ることもある。平年より10日早く開いた今年は、珍しくも卒園式や小中学校・大学の卒業式シーズンと時季が重なる▲花にまつわる慣用句を集めた辞典に〈桜は花に顕(あら)わる〉ということわざを見つけた。冬枯れの時は雑木に見えていたのが、春になって花開けばすぐさま桜と分かる▲同じように、その時が来れば人はたちまち才華を開かせる。そういう意味らしい。これから花咲かせる若い世代の巣立ちを、早々と開いたピンクの花がお祝いしている▲1年前、心待ちにしながら見られなかった“桜”もある。夏の東京五輪が延期され、桜の花びらの形をしたトーチをつなぐ聖火リレーが昨年は持ち越された。今年は、予定では25日に福島を出発し、県内を5月7、8日に巡る▲五輪・パラリンピックの開催都市で緊急事態宣言が解かれるめどは立っていないが、それをよそに、とにかくリレーは進められるのかどうか。桜のトーチが列島をつなぐ、もう一つの“花便り”も気に懸かる。(徹)


© 株式会社長崎新聞社