<社説>総務省接待問題 真相解明にはほど遠い

 疑念は深まるばかりだ。このまま当事者が真実を語らない限り、国民の不信を払拭(ふっしょく)することは不可能だ。 総務省幹部に対する接待問題で、衆参の予算委員会はNTTの澤田純社長と放送事業会社「東北新社」の中島信也社長に対する参考人質疑を行った。真相解明にはほど遠く、総務省側も含め、事実を明らかにしようという態度は希薄だった。

 その中でも重大な事実が明らかになった。東北新社が2017年8月の時点で放送法の外資規制違反を認識し、総務省側に面談で伝えていた。その後、違反状態を解消するため子会社を設立して衛星放送事業を承継し、その経緯も総務省に報告していたのだ。

 ところが、当時の総務省担当課長は面談の事実について「記憶にない」と否定した。双方の説明は食い違っている。

 外資規制違反の判明から子会社への事業承継までの手続きは極めてずさんだ。

 本来ならば、外資規制違反が発覚した段階で東北新社の放送事業者としての認定は取り消されるべきではなかったか。それにもかかわらず、子会社への事業承継によって違法状態を回避し、それを総務省は認めたのだ。

 極めて安直な手法だ。東北新社と総務省が共に違法状態の隠ぺいを図ったと言われてもしかたがない。東北新社は放送行政に対する認識が甘く、順法意識が欠落していると断じざるを得ない。それを容認した総務省も同様だ。監督官庁としての存在意義を失っている。総務省は東北新社に手心を加えたのではないかと国民は疑っている。

 一方、NTTによる総務省高官への接待では携帯電話料金の引き下げやNTTドコモ子会社化などへの影響が疑われている。NTTの澤田社長は「業務上の要請、あるいは便宜を受けるという話はしていない」と述べた。武田良太総務相は「国民の疑念を招くような会食には応じたことはない」と繰り返すばかりだった。

 これらの疑念を晴らすため衆参の予算委員会の参考人招致があったはずだ。ところが、政治家相手の会食の実態や便宜供与の有無など多くの疑問点は未解明のまま終わった。しかも、接待問題に深く関わった谷脇康彦前総務審議官が辞職した。これでは実態解明が遠のくばかりではないか。

 安倍政権下で起きた森友・加計問題でも官僚の虚偽答弁が繰り返され、真相は明らかにされなかった。それと同じことが繰り返されているのである。関係官僚の処分だけで幕引きを図ることは到底容認できない。

 武田総務相は接待問題を検証する第三者委員会を週内に発足させる。

 官民の癒着による行政のひずみと忖度(そんたく)政治の横行に国民はがく然としている。今後の検証・調査活動で事実を解明し、国民の前に公表することが政府の最低限の責務だ。

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