コロナ後の開放感に照準、投資が加速するマカオ カジノ産業の今

最近、マカオのカジノ収入が回復基調をたどり始めています。

マカオは新型コロナウイルスの感染拡大で、世界中から観光客が「消える」という大打撃を受け、カジノ収入は2020年2月以降激減しました。しかし現在は、中国本土では新型コロナの感染抑制が功を奏し、夏以降はマカオへの渡航規制を段階的に緩和しています。

今回は、コロナ後を見据えて動き出したマカオのカジノ産業について解説します。


カジノに客足じわり

2020年9月、中国全土でマカオ行きのビザ発給を再開されました。それに伴い、マカオへの観光客数も最近増加に転じています。マカオ政府の統計によると、2020年第4四半期(10~12月)にマカオを訪れた観光客は前年同期比79.6%減の約188万人(延べ)と大幅減少でしたが、第3四半期(7~9月期)の75万200人(延べ)からは急増しています。

ポストコロナの動き

2021年2月に中国本土からマカオへの渡航者に対して講じられていた隔離措置が免除されました。また同時期、マカオ政府は新型コロナウイルスのワクチンについても、中国製薬大手の上海復星医薬などが開発したワクチンの輸入を承認し、計40万回分の購入を計画している事を明らかにしました。

3月にはカジノ施設に入場する際の新型コロナウイルスPCR検査の陰性証明書の提示も免除されました。このように、中国本土からの観光客にとって、マカオへのアクセス、カジノ施設利用の利便性は高まっています。

ただ、国際観光都市でもあるマカオのカジノ市場の本格的な回復は、世界のコロナ動向にも左右されます。そうしたなか、世界全体の新型コロナウイルスのワクチンの累計接種回数が2021年3月8日までに3億回を超えたことは好材料です。

国別では米国、中国の接種回数が突出し、2ヶ国で全体の約5割を占め、欧州各国でも普及が進んでいます。今後もワクチン接種が進み、世界的な旅行需要などが回復に向かえば、マカオのカジノ事業者の業績回復を後押しするとみています。

ポストコロナを視野に入れるカジノ事業者

すでにマカオのカジノ事業者たちは「ポストコロナ」を見据えて、積極的に施設のリニューアルなどを行っています。

例えば、米ラスベガス・サンズ傘下のサンズ・チャイナ(01928.HK)は2021年末までに施設のリニューアルなどを通じて、これまで抑えられていた需要を多く呼び込む方針を掲げています。

その一環として、英国のロンドンをテーマにしたカジノを含む統合リゾート(IR)の開発などを推進しています。「ベネチアン」、「パリジャン」という欧州の人気都市を再現したIR施設はオープンしており、そこに英国の有名なランドマークを新たに加えることで、既存施設とのシナジー効果を図る計画です。

また、マカオのカジノ大手の銀河娯楽(ギャラクシー:00027.HK)は統合型リゾート(IR)のギャラクシー・マカオに、アコーホテルズ傘下のラッフルズが入ることで合意したと、2021年3月初旬に発表しました。

部屋数はスイート約450室で、2021年下期にオープンする予定です。さらに、マカオのカジノ運営大手の澳門博彩(SJM:00880.HK)は2021年2月、コタイ地区で開発中のIRリゾート「グランド・リスボア・パレス」について、2021年上期の開業を目指していることを明らかにしました。

動意づくカジノ銘柄

株式市場は常に先を読みますので、マカオのカジノ銘柄の株価は動意づき始めています。コロナによる「閉塞感」が長く続いた分、コロナ終息による「開放感」はマカオのカジノ市場にも恩恵をもたらすとみています。

私も在宅勤務などで溜まった鬱憤を、海外旅行などで晴らしたいと考えており、その行き先としてマカオのカジノも選択肢に入っています。

<文:市場情報部シニアマネージャー 佐藤 一樹>

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