対馬の海岸に漂着 プラごみ回収 商品化へ  洗剤容器やペン、買い物かごに

海洋プラスチックや流木など、さまざまな海ごみが漂着している対馬の海岸=対馬市美津島町赤島

 国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)では環境問題への取り組みが重要な要素となっている。対馬では海岸に漂着した海洋プラスチックごみがリサイクルされ、大手企業が関わって洗剤容器や筆記具などさまざまな製品へと生まれ変わっている。2017年から始まった新たな“資源の循環”を追った。

 対馬は対馬海流と、大陸からの季節風の影響を受ける国境の島。対馬市によると、沿岸には年間約2万立方メートルのごみが国内外から漂着。しかし、入り組んだ地形もあり、回収できているのは約8千立方メートル。このうちペットボトルやポリタンクなどのプラごみは約2600立方メートルに上る。
 こうした状況の解決に乗り出したのが、リサイクル推進コンサルタントのテラサイクルジャパン(横浜市)。17年からの4年間で、対馬市が回収した海洋プラごみのうち約1300立方メートル(約50トン)を買い取り、リサイクル業者の協力でペレット化。19年、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)がそのペレット約6トンを購入し、容器原料の約25%として配合した国内初の台所用洗剤「ジョイ オーシャン プラスチック」55万本分を生産、販売した。

対馬の海洋プラごみをボディー部分の原料に使ったパイロットコーポレーションのボールペン(同社提供)

 テラサイクルジャパンの仲立ちで、対馬の海洋プラごみはさまざまな分野で利用が拡大。20年末には筆記具大手パイロットコーポレーションが、油性ボールペンのボディー原料に使った「スーパーグリップG オーシャンプラスチック」を発売。今年に入って化粧品大手のコーセーと、コンビニ大手のファミリーマートがそれぞれ海洋プラごみを原料に用いた買い物かごを導入した。

再生材を使ったファミリーマートの買い物かご(同社提供)

 パイロットコーポレーションは「創業者が船乗りで、社名がパイロット(水先案内人)と海に縁があるということもあり、昨秋、再生材の紹介を受けてすぐに社内で問題意識が共有された」と商品化の背景を説明。壱岐市、対馬市などの4店舗に再生材の買い物かごを設置したファミリーマートには、利用客から「レジ袋削減など私たちもできることを協力できれば」との声が寄せられたという。
 一方、伊藤忠商事は対馬の海洋プラごみを原料にしたポリ袋を開発。海岸清掃などに活用してもらうよう、6月にも対馬市や県などに無償提供する予定。
 対馬市環境政策課はこうした企業の取り組みについて「海洋プラごみ買い取りにより埋め立て処分を減らせるだけでなく、新たな海ごみの回収費用に充てることもできる。ごみだったものが資源へと変わっていくプラスの循環が生まれるよう、連携を進めていきたい」と意気込んでいる。

© 株式会社長崎新聞社