現役東大院生が巻き起こす移住ブーム~古民家再生とテレワークを巧みにマッチング

[愛媛県内子町]

 愛媛県のほぼ中央に位置する内子町に、2千人が暮らす自然豊かな山あいの「小田地区」(旧小田町)があります。人口減少率が年4%に達するこの地区の再生に立ち上がったのは、2年前に着任した地域おこし協力隊の岡山紘明隊員(26歳)。現役の東京大学大学院生です。彼の発案した古民家再生とテレワーク体験プロジェクトが功を奏し、いま、小田地区に移り住む若者が増え、移住ブームに。その取り組みを紹介します。

◎「どい書店」を活動拠点に

 岡山隊員は、空き家だった書店を借り受けて移住者の滞在拠点を「どい書店」と名付けて再生しました。この名前には「Do it !」(さぁ、やろう!)の意味が込められています。本は売り込ません。町になくなってしまった「喫茶店」と「文具店」の機能を兼ね備え、多くの若者が集うようになり、やがて小田地区への移住窓口になりました。

 会員制交流サイト(SNS)を使った彼の情報発信力は巧みで、Instagramを中心にFacebook、Twitter、YouTubeも活用。田舎暮らしや古民家が好きな人にターゲットに絞り、若者が古民家&田舎暮らしを楽しんでいる様子を発信しています。これまでに、カメラマンや映像作家、プログラマー、シンガーソングライターなどさまざまなスキルを持つ若者が10人程度移住してきました。

 映像制作をしている移住者Aさんは、愛媛県松山市から移住しました。小田地区の仕事をきっかけに半年にわたって「どい書店」で滞在し、松山市のバイトを掛け持ちしながら小田地区に親しみ、移住を決めました。移住者Bさんは神奈川県出身。プログラミング教室をしている内子町の企業に入社し、現在はフリーランスでウェブ制作をするかたわら、プログラミング教室の先生としても働いています。

 彼らが中心となって新しい動きが次々に起こっています。動画編集、プログラマー、ウェブライター、写真家がそろっているため、チラシやホームページ製作、プロモーション案件などこれまでは町外に発注していた仕事を地元で受けられるようになりました。空き家の掃除や、クリエイター向けのエージェント会社の設立、ワーキングスペースやシェアハウスの立ち上げ、住民を巻き込んだ勉強会や映画観賞会など幅広い取り組みに挑戦しています。

 ちなみに、古民家の再生には行政の支援はありません。利用者の施設利用料やクラウドファンディングを行い、民間主体で取り組む事業になっています。

◎テレワーク移住体験施設の整備

 コロナ禍の影響でテレワークやワーケーションが注目されるようになりました。岡山隊員は、町が所有する旧二宮家住宅を活用してテレワーク移住体験事業の準備を進めています。この住宅は、内子町の名誉町民である故二宮幸巳氏の生家。1942年(昭和17年)の建築で、戦時中にもかかわらず良材を用いて造作され、今もほぼ当時の姿のまま保存されています。

 岡山隊員はこの古民家再生に住民を巻き込もうと週1回の清掃活動を発案しました。建物のファサード(正面)を磨くところから始まり、土間周辺の柱や梁(はり)、たんす磨き、そして、荷物の搬出。特に本の量が多く、一冊一冊磨く作業はとても根気がいります。でも、掃除は空き家と住民をつなぐきっかけになるんです。空き家が再生されていく様子を体感でき、愛着が生まれるからです。定期的な活動を通じて顔なじみもできます。参加しない人も、古民家の扉や窓が開いていると「何が起きてるんだろう」と関心を寄せます。

 このほかにも、移住者仲間や地域と協働して、旧伊予銀行小田支店の建物を地元の林業会社が購入し、地元の若者がシェアオフィス「コバンク」を運営しています。さまざまなクリエイターが集まり、新たなプロジェクトが生まれる場になっています。内装や生活用品に木材をふんだんに使用し、林業の町をPRしています。

 こうした取り組みは広がりをみせ、古い旅館の建物を借り受け、シェアハウスへ改装するプロジェクトも進行中です。移住者の集うまちづくりにご期待ください。

愛媛県内子町に移住したみなさん
移住希望者の滞在拠点として再生した古民家「どい書店」
旧伊予銀行小田支店の建物が移住した若者のシェアオフィスに