西武・今井に求められる奮起… 高3夏に頂点極めた右腕が同学年の阪神・佐藤輝に被弾

阪神戦に先発した西武・今井達也【写真:宮脇広久】

作新学院で全国制覇果たした今井と、兵庫県大会初戦コールド負けの佐藤輝の邂逅

■阪神 5-3 西武(オープン戦・17日・メットライフ)

西武の今井達也投手は17日の阪神とのオープン戦(メットライフドーム)に先発したが、同学年のドラフト1位ルーキー阪神・佐藤輝明内野手に1発を浴びるなど、5回3安打3四球4失点。夏の甲子園優勝の肩書を引っ提げドラフト1位で入団した右腕は5年目を迎えたが、豊かな才能が本格的に開花する兆しはまだ見えない。

「ハチャメチャというわけではない。いい球もあった」。辻発彦監督が試合後に取りなしたように、常時150キロを超える速球の勢いは最後まで衰えなかった。しかし、ここぞの場面で不用意だった。

1回先頭の近本に対する初球の152キロが真ん中高めに浮き、すさかず右中間二塁打を浴びる。これをきっかけに先制点を許した。続く2回には先頭の佐藤輝にカウント1-1から外角高めの150キロを右中間スタンド上段まで運ばれた。「結構飛ばされてしまいましたね。インハイで勝負すればよかったかと……。悔いが残りますし、悔しいです」とコメントした。

なおもこの回、1死二塁で二塁走者・梅野に意表を突かれて三盗を許し、直後に板山に左犠飛を献上。5回先頭の板山に右中間席へ放り込まれたのも、カウント0-1からの外角高めの150キロだった。被本塁打2はいずれも左打者に、ほぼ同じコース、同じ球速のストレートを、同じ方向へ打たれたことになる。

辻監督は「ストライクを取る手段は、空振りと見逃しだけではない。全球必死に投げてもダメ。ストライクを先行できるように、もう少し考えて投げてほしい」と緩急をつけるなどの工夫を求める。

ローテの軸として期待された昨季は3勝4敗、防御率6.13に終わった

前述の梅野の三盗のみならず、1回2死一塁ではサンズの初球に一塁走者・大山に二盗を許すシーンもあった。「初球から4番に走られたり、三盗されたり……開幕前にこういうのをやってもらって良かったと思います」と指揮官も教訓として受け止めるしかなかった。チームは先発投手陣が手薄。開幕ローテの一員として期待されている状況に変わりはない。

昨年のオープン戦では快投を続け、「ダルビッシュを彷彿とさせる」とまで評され、先発ローテの軸として大いに期待された。しかし、ふたを空けてみれば制球が定まらず、カウントを悪くしては一発を食らうパターンが続いた。結局3勝4敗、防御率6.13に終わった。

一昨年オフには楽天・涌井秀章投手の自主トレに“弟子入り”して走り込みに徹し、昨秋には面識のなかったダルビッシュ有投手(パドレス)にSNSのダイレクトメッセージで相談を持ち掛け、アドバイスをもらった。本人もきっかけをつかもうと必死だ。

潜在能力の高さは誰もが認めるが、同い年の選手が大学を経由してプロ入りしてきただけに、いつまでも「若手成長株」ではいられない。今井が栃木・作新学院のエースとして全国の頂点を極めた高3の夏、佐藤輝を擁する兵庫・仁川学院高は県大会初戦で5回コールド負けを喫した。時は流れた。そろそろひと皮むけて、プロとして輝きを放ちたい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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