ファーストクラスの作法

長久保 美奈・著(株)プランニング・オフィス社・刊

©NEW YORK SEIKATSU PRESS, INC.

 人と人とが対面で会話をしたり、食事を共にしたりというごく当たり前のことが、なかなか思うようにできなかったパンデミックの1年。気がつけば、在宅勤務が日常となり、会社にも毎日は行かないのでアイロンの効いたワイシャツに袖を通したり、ネクタイを締めたりもとんとご無沙汰の人も多いはず。それは日本にいてもニューヨークにいても同じだろう。この1年と少しの時間で、何か大切なものを忘れてしまったことはないか、そんなことをふと思い出させてくれるのが、本書、プランニング・オフィス社からこのほど刊行されたコラム集『マナーはいかが?』だ。

 日本航空の元国際線客室乗務員(CA)だった筆者の長久保さんが、出張で海外に滞在した時の体験や日本での講演活動で紹介しているマナーの実例を挙げながら、お洒落、お出かけ、食事の大きな3つのテーマに分けて日本の事情や海外でのルールなどを分かりやすく面白く解説している。

 本紙「週刊NY生活」でも6年間、同名タイトルの連載をしていたので覚えている読者も多いはず。本紙では、海外在住者向けのマナーコラムが中心だったが、今回出版された本は、筆者が拠点とする仙台の人気月刊誌『りらく』に6年ほど前から書き続けているコラムの中から特に人気のあったものと、今回新たに書き下ろしたものを収録している。

 日本国内では法人企業、医療機関、大学などで年間300を超える講演や研修の講師としてトップレベルの接遇を指導している著者が、階段を上る時は女性を先に、降りる時は男性が先にという相手を安全に上り降りさせる理由から生まれたマナーや日常の気遣い、レストランや会食での着席の順位、テーブルマナー、日本国内での講演活動の中でも特に人気の「婚活マナー講座」から相手に好感を持たれる会話術などもアドバイスしている。世界のどこにいてもEメールやLINEで誰とでも瞬時に繋がれる時代。ほとんどのことがバーチャルで体験でき、ショッピングも、お見合いも家にいてできる時代だが、人との関わりがなくなるわけではない。

 心が伝わる一例として、エアメールの出し方なども丁寧に解説している。誰でも分かりそうな気がするが、最近の若者は手紙を出したことがないので、封筒のどこに宛名をどれくらいの大きさで書けばいいのか住所の英語での書き方は丁目が先か番地が先か、差出人の自分の名前と住所はどこにどう書けばいいのかわからない者が多い。

 長久保さんは「決定的に実体験が不足していく中で、周りに取り残されないためにも、人間らしさ、人同士の会話やコミュニケーションが必要なことは変わらないんです。そのためにマナーが必要なんです」と話す。作法としての堅苦しいマナーだけではなく、今を生きていくために、もっとカジュアルにどこで暮らしていても生活の場面で使える知識やグローバルなマナーこそが本当に磨かれた人のファーストクラスのマナーであると教えてくれる。海外を旅する気分で読める肩の凝らないコラム集だ。        (三)