要指導薬の対面規制裁判、楽天の敗訴が最高裁で確定/今後の規制検討に影響か

【2021.03.19配信】3月18日、最高裁第1小法で「要指導医薬品指定差止請求事件」の判決が出された。要指導医薬品販売において薬剤師の対面を義務付けていることに対し、通販事業者である楽天が職業の自由などを定めた憲法22条1項に違反するとして国に撤廃を求めていたもの。判決では楽天側の上告を棄却し、楽天の敗訴が確定した。

要指導医薬品の販売又は授与をする場合には、薬剤師に対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を行わせなければならず、これができないときは要指導医薬品の販売又は授与をしてはならない旨を定めている。

今回の裁判では、店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法による医薬品の販売をインターネットを通じて行う事業者であったRakuten Direct株式会社が、規定は職業選択の自由などを定めた憲法22条1項に違反すると主張して、要指導医薬品として指定された製剤の一部について、販売をすることができる権利ないし地位を有することの確認等を求めたもの。

小池裁判長はまず、憲法22条1項に関して、職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形をとるとして、薬事法は保健衛生の向上を図ることを目的にしており、目的が公共の福祉に合致することが明らかとした。

その上で、安全性の評価が確定していないものであるところ、「その販売又は授与をする際に、薬剤師が、あらかじめ、要指導医薬品を使用しようとする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況等を確認しなければならないこととして使用者に関する最大限の情報を収集した上で、適切な指導を行うとともに指導内容の理解を確実に確認する必要があるとすることには、相応の合理性があるというべきである」とし、対面規制の合理性を認めた。

さらに、「また、本件各規定は、対面による情報提供及び指導においては、直接のやり取りや会話の中で、その反応、雰囲気、状況等を踏まえた柔軟な対応をすることにより、説明し又は強調すべき点について、理解を確実に確認することが可能となる一方で、電話やメールなど対面以外の方法による情報提供及び指導においては、音声や文面等によるやり取りにならざるを得ないなど、理解を確実に確認する点において直接の対面に劣るという評価を前提とするものと解されるところ、当該評価が不合理であるということはできない」とした。いわゆるリアルな対面の優位性についても一定の合理性があると認めたと言える。

また、要指導医薬品の市場規模が1%に満たないことから、「制限の程度が大きいということもできない」とした。

以上の理由から、「規制に必要性と合理性があるとした判断が、立法府の合理的裁量の範囲を超えるものであるということはできない」として、「規定が憲法22条1項に違反するものということはできない」と結論づけた。

電話やメールがリアルな対面販売に劣るという評価が不合理ではないとした判断は、今後のオンライン服薬指導のルールづくりや、現在、検討が進んでいるOTCの遠隔管理販売解禁に対しても、一定の影響を及ぼしていくことになりそうだ。

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