小学生時代の恩師が見た田中将大VS坂本勇人 初回の対決は「力んで制球が散らばった」

巨人・坂本勇人(左)と楽天・田中将大【写真:福谷佑介、荒川祐史】

捕手・太田は「中島さんを三振に取った球は凄かった」と感嘆

■楽天 6-3 巨人(オープン戦・20日・東京ドーム)

楽天に8年ぶりに復帰した田中将大投手は20日、巨人とのオープン戦(東京ドーム)に先発し、7回3安打4奪三振2四球1失点の好投。開幕2戦目の27日・日本ハム戦(楽天生命パーク)で予定されている復帰後初の公式戦先発へ向け、順調な仕上がりをうかがわせた。幼なじみの巨人・坂本勇人内野手とは2打席対戦し、四球と中飛だった。【宮脇広久】

田中将はこれで練習試合を含め5試合に実戦登板。石井一久監督は「各登板ごとに課題を1つずつ塗りつぶしてきた」と評する。当初はメジャーに比べて柔らかい日本のマウンドに対し戸惑いも見せたが、徐々に順応した。前回登板の14日・DeNA戦(静岡)では「打たせて取ることをテーマにして」(小山投手コーチ)臨み、その通りに5回4安打3奪三振無四球無失点に抑えた。

開幕前最後の実戦登板となったこの日の課題の1つは、マー君の代名詞でもある「ギアチェンジ」だったようだ。石井監督は「行くところは行く、抜くところは抜く、という力の入れ方が試合の中でうまく使えていた」とうなずいた。

どんなに凄い投手でも、全球全力投球で完投することはできない。相手打者の力量、狙い球、精神状態に応じ、7~8割の球を交えてアウトを重ねていく。勝敗を左右する場面で強打者を迎えた時には、一気にギアを上げ、それまで見せていなかったような剛球で圧倒――。田中将の投球スタイルはそんなイメージが強い。

石井監督によると、マー君のギアチェンジは「スライダーにしても100%切っていくものと、そこそこストライク近辺に投げておけばいいというような90%くらいのものがある。打者がそこまで打ち気でない時や、打たせて取る所と空振りを取る所で投げ分けていた」と言うほど細かく精密である。

田中将大は坂本勇人を称賛「追い込まれてから四球を選ぶあたりはさすが」

この日、1回2死走者なしで坂本の第1打席を迎え、カウント3-2から投じた内角高めの速球は150キロを計測したが、見極められ四球を与えた。

4回には先頭の若林晃弘に右中間席へ先制ソロを喫し、次打者が坂本。カウント1-1から149キロの内角速球を中堅フェンス際まで飛ばされたが、なんとか中飛でしのいだ。さらにこの回、2死二、三塁とされ、ベテランの中島宏之を迎えると、ツーシームとスライダーでカウント1-2に追い込んだ後、この日最速タイの150キロの速球で空振り三振に仕留めた。バッテリーを組んだ太田光捕手に、「この日ギアが上がったように見えた場面は?」と聞くと、「中島さんを三振に取った最後の球は凄かったですね」と感嘆した。

マー君がギアを上げたのは、中島を抑えた場面だけだっただろうか。ちなみに、田中将と坂本は1988年生まれの同級生で、小学生時代には兵庫県伊丹市の少年野球チーム「昆陽里(こやのさと)タイガース」でともにプレー。6年生時には坂本が投手、田中将が捕手としてバッテリーを組んだ。当時の監督で現在理事長を務める山崎三孝氏は、この日の第1打席の四球を「田中が力んで制球が散らばった」と見た。

山崎氏は「坂本と田中は性格が対照的。当時も親友というよりライバルでした。田中は真面目で、練習が終わればすぐに帰宅。当時コーチを務めていた父親と一緒に個人練習をしていたのだと思います」と明かす。

中島へのラストボールと同じ150キロの速球が外れ、因縁の坂本を歩かせた田中将。「追い込まれてから四球を選ぶあたりはさすが」と相手を称賛してみせた。坂本だったからこそ、ここでもギアを上げていたのだと言ったら、見る側の思い込みが強すぎるだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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