【人生を変えることば選び】渋沢栄一が大切にした3つの視点「視・観・察」

松本秀男氏

【ほめ達・松本秀男 人生を変えることば選び】春、新生活が始まります。新しい人間関係や新しい仕事など、働く姿勢について今回は考えたいと思います。

今年のNHKの大河ドラマ「青天を衝け」の主人公でもあり、2024年からは新一万円札のモデルとなることも決まっている渋沢栄一。帝国ホテル、東京海上日動、東京ガス、みずほ銀行など500社もの企業を生み出し、日本経済の父とも呼ばれました。今に残る名だたる企業群の名前を眺めるだけでも、私たちは今も「渋沢日本」に生かされていると感じます。お札の顔も納得ですね。

その渋沢が大切にしていたのが「道徳」であり、その道しるべとしたのが「論語」でした。著したのが「論語と算盤」です。その中で渋沢は論語にならって人間観察で大事な3つの視点「視・観・察」を取り上げています。これが働く上でも非常に役立つと感じました。

まず「視」は肉眼でその人の見た目や行動をみる作業。続く「観」は心眼で動機をみる。果たしてどのようなことを考え、その作業を行っているのか。最後の「察」はさらに観察を深めて、その人の安心がどこにあるのか、何に満足しているのかをみるという作業になります。最後の「察」が特に重要で、たとえば仕事をする上でも「自身の安定のため」や「お金が欲しい」だけで行うのか。それとも社会の安定や課題克服のために広い視野を持って仕事に取り組むのかで、行動も結果も変わってきます。

そのため働くときには自分自身の心をのぞいてみるといいと思います。モチベーションも、そして心の安心も正しい方向に向いているだろうか? 仕事のためと言いながらポーズのように部下を叱責しつつ、実は自分のプライドや評価を気にしているだけだったりして。私も自分のこれまでを振り返ってドキドキします。

渋沢栄一は多くの企業を生み出し、経済活性化を果たしました。その根底には正しい心を持った「正しい人」が商売を行うことで経済が発展するという考え方です。まさにいまこの時代にも大切なことではないでしょうか?

春は心も行動もリセットしやすい時期。新卒で働く人、転職で新しい職場に臨む人、また新しいパートナーと仕事に臨む人、様々かと思います。花見がてら、自分の心も「視・観・察」でゆっくりながめて、いい春を迎えましょう!

☆まつもと・ひでお 1961年東京都生まれ。国学院大学文学部卒業後、さだまさし氏の制作担当マネジャー、ガソリンスタンド経営を経て、45歳で外資の損害保険会社に入社。トップ営業マンとなり数々の実績を作る。現在は一般社団法人・日本ほめる達人協会専務理事を務め、企業セミナーなど多方面で活躍中。著書に「できる大人のことばの選び方」や「できる大人は『ひと言』加える」など。

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