壱岐・勝本浦「漁業プラス観光へ」 持続可能な地域社会目指す

家がひしめくように建ち、港には漁船が係留されている=壱岐市・勝本浦

 人口減少が進む離島の長崎県壱岐市で小学校区単位の「まちづくり協議会」を設立し、地域住民が主体となって持続可能な地域社会を実現する取り組みが進められている。個人や団体単独で対応が難しい課題について住民が連携して解決に当たるのが狙いだ。
 6日、島北端の公民館で「勝本浦まちづくり協議会」の事務所開所式が開かれた。全18小学校区のうち11番目の設立。まちづくり計画書によると、勝本浦は好漁場の七里ケ曽根など天然の魚礁に恵まれ、戦後は漁業の町として発展。だが近年は水揚げが落ち込み、人口も減少。2020年3月末時点で833世帯1941人が暮らす。一方、沖に浮かぶ無人島の辰ノ島は透明度の高いビーチが特長で、遊覧船は年々人気が高まっている。
 会長に就任した吉野弘一さん(73)は「漁業中心のまちから漁業プラス観光のまちへ発展させ、人が行き交うまちづくりを目指したい」と抱負を述べた。
 地域の課題の一つに商店街の活性化がある。大型店の進出などで商店街の利用が減り、各店舗の情報が住民に行き渡らず利用減に拍車が掛かっている。商店街で大正時代から続く呉服店を営む吉田正明さん(83)は「以前は店舗がずらーっと並んで朝市もにぎわっていた」と往時をしのび、「漁が落ち込んだ影響が大きい」と現状を憂う。夏の伝統行事ペーロン大会の参加隻数も減り、存続が危ぶまれているという。
 こうした課題の解決に向け事務局の役割を務めるのが、地元住民で集落支援員の坂本栄子さん(41)。坂本さんは「まずは協議会のことを住民に知ってもらい、勝本浦には素晴らしいものがたくさんあることを再認識してほしい」と話す。
 壱岐市は2019年度から「まちづくり協議会」の事業に着手した。各地区で住民による準備組織を立ち上げ、アンケートなどで地域の課題を把握。まちづくり計画書を作成し、市に協議会の設立を申請。認定されれば活動資金が交付される。
 具体的には防災、子ども・高齢者支援、伝統・文化継承、交通、空き家対策など諸課題について、自治公民館、消防団、婦人会、PTAなどの既存の組織が協力し解決に取り組む。市は拠点施設を提供し集落支援員を配置するほか、地区出身の市職員数人を「地域担当」とすることで活動を後押しする。
 同市の人口は戦後、1955年の5万1765人をピークに減少し、今年1月末時点で半減の約2万6千人。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2045年には約1万4600人まで減ると見込まれる。
 集落支援員の坂本さんは「移住者が来ることを住民が望むのか、それとも人口流出に歯止めを掛けるのか。地元にとって何が良いのか見極めたい」と話している。

今後の活性化策が求められる商店街=壱岐市・勝本浦

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