都心から地方へ 地域創生・地域活性化にICTを活用しよう

コロナ禍をきっかけに、一般企業が本社機能を都心から地方へ移転する動きが広がっています。このように、地方創生が叫ばれる中、地方にいながらどのように地方を活性化すればいいのでしょうか。日本メディアリテラシー協会理事長の寺島絵里花氏が、地域活性化にICTを活用する方法を伝授します。

本社機能を地方に動かす大企業

2020年、人材派遣大手のパソナグループは本社機能を淡路島に移し、2024年5月までに従業員1,200人を異動させる計画を発表し、着手しました。

なぜ、淡路市島だったのでしょうか。実は、パソナグループの公式HPによりますと、2008年から農業の活性化・独立就農を目指すチャレンジファームを皮切りに、兵庫県淡路島で"人材誘致"による独自の地域活性事業に取り組んでいたそうです。

文化、芸術、健康、食、教育など、人が集まる夢のある産業を創造し、島内で多くの雇用を創出。さらに、地域資源を活かした施設の開設や、さまざまなイベント開催を通して、淡路島の魅力を島内発信し、国内外から多くの方々訪れるようになったとのことでした。

いまなぜ企業は本社機能を移転しようとしているのでしょうか。この動きは、コロナ終息後も続き、日本のビジネス・社会を一変させるのでしょうか。行政や学校、地域にも“地元の人”以外の移住してくる人々との関係を考えていく必要がありそうですね。

ふるさと納税で地方が活性化している

日本の地方では、首都圏への若者の流出によって高齢化・過疎化が急速に進み、地域経済や自治体機能、コミュニティの維持発展が社会課題となっています。

インターネットの普及により、このような社会課題を解決する取り組みをしている地域も増えています。2008年に始まった「ふるさと納税」は制度開始から10年以上経った今日も、その規模を拡大しています。読者の皆様も、ふるさと納税の返礼品として地方から美味しい果物や野菜など届いたことがある方もいるのではないでしょうか。

総務省が2019年に実施した調査によると、平成30年度のふるさと納税受け入れ額実績は約5,127億円(過去最高だった前年2017年度比:約1.4倍)、受け入れ件数は約2,322万円件(過去最高だった前年2017年度比:約1.34倍)となっており、拡大の一途を辿っていることがよくわかります。

ふるさと納税は各自治体が自由に使える財源であり、リーダーシップと新しい発想次第でこれまでの決められた予算の中では生まれなかった先進的な取り組みに使うことができます。とくにふるさと納税の拡大は、その時期を地方創生・地方移住促進の拡大と同じくしており、ふるさと納税はまちづくりにもさまざまな形で活用されています。その成功した例として北海道の十勝地方が挙げられます。

十勝地方には、上士幌(かみしほろ)町という人口約5000人の小さな町があります。町面積は約696平方キロで、その約76%を森林が占める農業と畜産の町です。その上士幌町はこの10年間で地方創生に成功しました。移住人口を増やし、教育の革新を行い、地域を変えていったのか、「ふるさと創生―北海道上士幌町のキセキ」 というタイトルで本も出版されているので、興味がある方は読んでみるとおもしろいと思います。

「地方創生とICT」インターネット社会がもたらすこと

ICTの普及によりさまざまな分野で生活が豊かになっています。分野も幅広く、農業・林業・個人番号カードの利活用、行政の効率化、救急支援、雇用創出、観光業に加え、GIGAスクール構想で、2021年は教育もICT化が急速に進んでいます。

たとえば、徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」がユニークな事業として世界各国から注目を集め視察に訪れる人々があとを絶ちません。ブロードバンド網を活用し、「つまもの」(葉っぱなどを活用した料理に添える飾り)の市況情報をリアルタイムで共有できる「いろどりシステム」を構築しました。

当時、平均70歳の高齢者が、タブレット端末などをフル活用し、山の葉っぱを集めて、市況に応じた最適なタイミングで全国に出荷・販売する「葉っぱビジネス」を展開タブレットやスマホで受注を受ける仕事は2012年に映画化・書籍化もされました。

災害大国ともいわれる日本では防災もICTによって教育が進んでいます。東日本大震災で被災した宮城県石巻市が中心となって、被災地の「現在・過去・未来」を伝える「石巻津波伝承AR」アプリを開発・無償公開を行っています。同アプリを活用して、一般社団法人みらいサポート石巻が被災地域をガイドする「防災まちあるき」を実施し、全国で震災の追体験と復興の未来予想を行う機会を提供し2016年に発生した熊本地震でもその体験を活きたそうです。

インターネット社会と聞くと、どうしてもマイナスなイメージが先行してしまう方も多いと思いますが、確実に進歩をしている側面もあるのです。新しい文化が入るときには必ずといっていいほど、さまざまな価値観や考え方があるため摩擦が起こります。

デメリットを知ることも大切ですが、メリットやプラスなイメージを持ち“何がどのように発達し、より良くないっているのか”をキャッチしてほしいと願っています。このキャッチする力が、メディアリテラシーとしても重要で、情報に惑わされるのではなく賢い使い手になる意識をもつことが大切です。

ICTによって、社会がますます発展していく中で、心にとめてほしいと思っています。

これまでの【寺島絵里花の子どもメディアリテラシー講座】は

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