男女別で候補者の当選率を比べると、高いのは?(データアナリスト・渡邉秀成)

前回は男女別の投票率、投票者数の違いを観察してきました。

国政選挙の投票率を男女別で比較してみよう!選挙の結果を左右する「投票者数」が圧倒的に多いのは?(データアナリスト・渡邉秀成)

観察の結果、男女別投票率の差は大きく開いているものではありませんが、女性の方が有権者数が多いので、男性よりも投票率が低くとも、投票者数で比較をすると、男性有権者の投票数より女性有権者の投票数が多いことがわかりました。

男女の投票率は大きく差が開いているものではありませんでしたが、男性女性の国政選挙の当選率、選挙で争点になりやすい男女の賃金差、地方議会で女性の占めている割合についてはどのような傾向があるのでしょうか?

今回はこれら男女の性差により、当選率、賃金差、地方議会議員についてどのような差があるのかを観察していきたいと思います。

まず、国政選挙、統一地方選挙における女性議員の当選率についてグラフ化をしたものが下記になります。

 

国政選挙おける男女の当選率を比較すると、女性候補者の当選率が20〜30%なので、圧倒的に男性候補者のほうが当選率が高いことがわかります。

ただ、統一地方選挙における女性候補者の当選率は、国政選挙と比較をして高い傾向にあることがわかります。

日本の国会では男性議員が占める割合が圧倒的に多いのですが、新型コロナウィルス感染症対策が迅速に進んだ、台湾の台湾立法委員(国会議員)において、女性議員が占める割合についてグラフ化したものが下記になります。

 

 

注:1992年選挙から2004年選挙までは当選者が225人、2008年以降、当選者は113人です。

このグラフを見ると、台湾では女性議員の割合は全体の4割以上であることがわかります。

日本と比較をすると圧倒的に女性議員の割合が多いことがわかります。

また。台湾立法委員のうち約2割は博士号を持ち、6割は修士号を保有しています。

このあたりも新型コロナウィルス感染症対策に迅速に対処できた理由の一つかもしれません。

(余談になりますが、台湾立法委員の選挙結果等データは、当選者平均年齢、最終学歴、出身地域等がとても整理された形で公開されているので、データ利用がしやすいです。
日本の総務省が公開している選挙結果もPDF形式ではなく、csvやxls形式でデータ公開をするとさまざまな分野でのデータ利活用がしやすくなるものと思います。)

次に地方議会での女性議員の割合についても見てみましょう。地方議会での女性議員の割合については、内閣府男女共同参画局が公表しています。
下記リンク先には女性の政治参画マップ2020が掲載されており、女性議員の割合がどの程度あるのかについて見ることができます。
https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/government.html

これらのマップを見ると、まだまだ女性議員の割合は低い傾向にあることがわかります。
これから徐々に立候補する女性の人数が増えるとこのあたりにも変化が出てくるものと思います。

次は選挙で争点になりやすい事項についての男女差について比較をしたいと思います。

有権者が選挙で投票する際に考慮する内容について、公益財団法人明るい選挙推進協会が調査した結果をグラフ化したものが下記になります。

 

これらのグラフを見るとわかるように、生活に直結する課題について有権者が投票する際に考えていることがわかると思います。
これら各テーマに関する具体的な数値を観察してみましょう。

最初に生活に直結する賃金についての男女差を、厚生労働省のデータをもとにグラフ化をしたものが下記になります。

 

年齢層が若い段階では男女の賃金差は少ないですが、その後、賃金差が大きくなるのがわかります。

また、男性の賃金は50歳近くになるにつれ上昇幅が大きくなりますが、女性の賃金は男性ほど上昇幅がない傾向にあることがわかります。

また、正規職員、非正規雇用の賃金差についてもグラフ化をしてみました。グラフは正規職員の賃金を100として、非正規雇用の人の賃金がどの程度であるのかについて表現しています。

 

正規雇用の人より非正規雇用職員の賃金が低い傾向にあることがグラフから見えてきます。そして正社員、正職員の賃金を100とすると、約6割程度の賃金であることがわかります。

非正規雇用の人口が年々増えていること、そして2020年1月からの新型コロナウィルス感染症対策に関わる営業制限等で仕事がなくなる非正規雇用のかたが増えていることを考えると、第49回衆議院選挙では性差、雇用形態による賃金格差等を考えて投票する有権者の数が多くなることも考えられます。

新型コロナウィルス感染症対策では世界各国の対策と日本の対策の違いが大きく出ていますが、感染症対策に限らず、賃金、雇用環境、性別による各種差等について、今後、日本とその他の国との比較がなされ、それに対してどのような改善策をとるのかが大きく注目されるようになってくることと思います。

今回は女性議員の当選率、有権者が投票する際に重要視する経済、雇用に関係する具体的な数値を観察してきました。

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