開幕連戦のSTC2000第2戦は、シボレーvsホンダの元王者対決を制したカナピノが今季初勝利

 2020-21シーズンが2月に閉幕し、2021年の新シーズンがこの3月から開幕したアルゼンチン最高峰のツーリングカー選手権、スーパーTC2000(STC2000)の第2戦が首都ブエノスアイレスで2週連続開催で実施され、2016年シリーズチャンピオンのアグスティン・カナピノ(シボレーYPFチーム)が連勝を飾った。短いオフで最大の移籍劇となった2017-18年シリーズ連覇のファクンド・アルドゥソが、プーマ・エナジー・ホンダ・レーシングのホンダ・シビックSTC2000で優勝争いを演じ、2位を含む連続表彰台に上がっている。

 開幕戦の土曜クオリファイレースでは、自身5冠を達成したばかりの王者マティアス・ロッシ(トヨタ・カローラSTC2000)の先勝で幕を明け、日曜フィーチャーレースはタイトル奪還を期す2019年王者リオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)の勝利となった3月13~14日の週末に続き、首都ブエノスアイレス近郊に位置する元F1トラック、オスカー・ファン・ガルベスで引き続きの第2戦が催された。

 しかし、金曜プラクティス直前になって残念なニュースがパドックを覆い、王者トヨタ・ガズー・レーシングYPFインフィニアは、ディフェンディングチャンピオンのロッシに新型コロナウイルス(COVID-19)陽性反応が出たと発表。急きょ、その代役としてニコラス・モスカルディーニにトヨタ・カローラSTC2000のエースカーを託すとアナウンスした。

 ライバル勢もロッシの早期回復を願うコメントを残すなかで始まった週末だが、最大のライバルであるはずのルノー・スポール・カストロール・チーム勢が沈黙。FP1はホンダ移籍のアルドゥソが、土曜計時予選ではシボレーのカナピノがそれぞれ雨のなかで最速タイムを刻み、この週末はホンダvsシボレーの構図を予感させた。

 キャリア通算27度目のポールポジションから土曜クオリファイレースに挑んだカナピノは、前週開幕戦のフィーチャーレースでトップ10圏内を走行していたものの、「ポイントを獲得したすべてのドライバーには、次のラウンドでグリッドペナルティが与えられる」とのスポーティング規則を嫌って自らドロップバック。この週末の完全制覇に焦点を定めた戦略的判断を下していた。

 その重要なスタートでミスがあり、蹴り出しでわずかに遅れたカナピノだったが、フロントロウに並んでいたチームメイトのベルナルド・レイバー(シボレーYPFクルーズ)が大きな抵抗を見せず、カナピノは労せずして首位奪還に成功。そのまま僚友を従え、まずはトップチェッカー。移籍後の今季初表彰台を得た3位アルドゥソや、トヨタのスピードスター、ジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000)らを抑えて、日曜に向けても最前列のグリッドを確保した。

開幕戦の土曜はパンクでチャンスを逸し、この第2戦に照準を合わせた戦略的判断も下していたアグスティン・カナピノ(シボレーYPFクルーズ)
土曜クオリファイレース序盤は、3番手にもトーマス・ガリアルディ-ジェネ(シボレーYPFクルーズ)が付け、シボレーがワン・ツー・スリー体制を築いていた
移籍後の今季初表彰台を得た3位アルドゥソや、トヨタのスピードスター、ジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000)らを抑えて、日曜に向け最善のグリッドを確保した

■名エンジニアだった亡き父に捧げる週末完全勝利

 その日曜に行われたレースのスタートでも、前日と同様に出足の鈍いシボレー勢を出し抜き、ホンダのアルドゥソがロケットスタートを決めてホールショットを奪う。4番グリッドにいたトヨタのサンテロも、ターン2で軽いコンタクトを伴いながらシボレーを仕留め早くも2番手へと浮上する。

 ここですぐさま反撃に転じたシボレー陣営は、先鋒のレイバーが2021年から運用開始となった“プッシュ・トゥ・パス”でサンテロをかわし2番手へ。これに追随した元王者カナピノを先行させるなど、まだ第2戦ながらチームプレーに徹した好アシストを披露する。

 カナピノとサンテロの2番手争いはレース中盤まで続く激しい応酬となったが、そのプッシュ・トゥ・パス・バトルは15周目にワイドランを喫したサンテロが敗れ、カナピノに軍配。すると直後の18周目には他車のアクシデントでセーフティカーが導入される。

 これで首位アルドゥソのシビック以下、追随してリスタートを迎えたカナピノ、サンテロの2台は、ふたたびトヨタが2番手に上がりホンダにサイド・バイ・サイドを仕掛けると、この動きが決定的なチャンスとなり3番手カナピノの目の前にラインが開ける。

 ターン3で一気に2台をかわし先頭に出たシボレーは、そのまま2秒のギャップを築いて40分+1周のフィニッシュラインへ。2位ホンダのアルドゥソ、3位トヨタのサンテロを従え、カナピノはその狙いどおり、数週間前にCOVID-19で亡くなった名エンジニアの父に捧げる週末完全勝利を飾った。

「まずは時間を無駄にすることなく前に行かせてくれたチームメイトにお礼を言いたい。(YPFチームのエンジニアだった)父を頼りにせず、勝てるマシンを仕上げてくれたクルーにも感謝している。あらゆる点で、もう父の意見を聞けないのは難しいことだが、彼が残してくれたすべてを活用して先に進んでいくつもりだ」と、アルドゥソとの元王者対決を制して決意を語ったカナピノ。

 第3戦以降の開催地が未定のままだったSTC2000の2021年シーズンだが、ひとまず続くラウンドに関しては4月10~11日の週末に、コルドバのオスカー・カバレンでの開催がアナウンスされている。

その日曜フィーチャーレースでは、プーマ・エナジー・ホンダ・レーシングのホンダ・シビックSTC2000に乗る2017-18年シリーズ連覇のファクンド・アルドゥソが3番手から躍進する
急きょTGRアルゼンティーナのエースカーを引き継いだニコラス・モスカルディーニだったが、トップ10には絡めず
依然としてランキング首位はリオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)が守るも、カナピノも3位に急浮上した

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