ADJ、重量・長距離ドローン向けハイブリッド動力ユニット稼働試験に成功

ハイブリッド動力ユニット

エアロディベロップジャパン株式会社(以下:ADJ)は、重量・長距離ドローン向けに開発を進めている、ハルバッハ発電機とガスタービン動力を組み合わせたハイブリッド動力ユニットの稼働試験を成功させたことを発表した。また同時にドローン用DC300V(AC200V)級の⾼電圧対応プロペラ用モーター・ESCの稼働試験にも成功した。

同ユニットとプロペラ用モーター・ESCを合わせたハイブリッド動力システムは、50kgの荷物を搭載した総重量150kg超級の大型ドローンを60分飛行させることを目標に開発が進んでいる。

ADJ 30kWハイブリッド動力システム

ADJは、2018年に創業したスタートアップで、大型ドローン向けのハイブリッド動力システム(ハイブリッド動力ユニット及びプロペラ用モーター・ESC)を開発している。これまでのドローンは総重量25kg以下のものが多く、用途も空撮・測量などに限られていたが、物流網が充実していない地域への物資輸送や災害時の緊急物資運搬など、重量ドローン長時間飛行の実現が期待されている。

大型ドローンの社会実装にあたって「動力源」の部分がネックとなっており、既存のリチウムイオンバッテリーではその重量エネルギー密度(単位重量当たりの電池容量)の制約により、バッテリー搭載量を増やしても飛行できる時間が限られている。重量ドローンが長時間飛行するためには、リチウムイオンバッテリーを超える重量出力密度(単位重量当たりの発電量)を持つ動力源が求められる。

ADJは小型のガスタービンエンジンとハルバッハ発電機を組み合わせて発電させるというアプローチに目をつけた。高速回転するガスタービンエンジン(9~10万回転)によって、ハルバッハ配列という特殊な磁石配列を持つ、小型でありながら高性能な発電機を駆動することで、重量出力密度1kW/kgを超えられる可能性を秘めている。ガスタービンエンジンとハルバッハ発電機によるドローン用の動力源開発は、日本のみならず世界でも先進的な取り組みになるという。

■ハルバッハ発電機について

磁極を所定の角度で回転させながら一列に並べた磁石配列(ハルバッハ配列という)は、配列の裏側の磁束が表側に加わり表側に滑らかで強い磁界が発生する。この磁界とコアレスコイルを組み合わせると大電流を取り出しても発電機出力電圧の低下がなく、振動や騒音の少ない発電機が実現でき、また約3割の軽量化が実現する。

同技術は工学院大学・森下教授の特許発明によるもので、ハルバッハ発電機のライセンスをADJ開発パートナーが有している。

■ハイブリッド動力ユニット試作機の一部負荷試験に成功

2021年2月25日、茨城県・筑西市のパートナー工場で、ADJは開発中のハイブリッド動力ユニットの部分負荷稼働試験を実施。小型ガスタービンに投入した燃料から発電機を通じて電力を取り出し、プロペラ用モーターを回転させることに成功した。

当日はエンルート創業者で株式会社アトラックラボ代表取締役の伊豆智幸氏、大型ドローン開発に取り組むサイトテック社、JUIDA(一般社団法人UAS産業振興協議会)、その他のドローン関係者も見学した。伊豆氏は次のようにコメントしている。

ドローンだけでなく、コンピューターやAIによる細かな制御をする場合、動力の電動化は必須となってきており、小型発電機によるエネルギーの変換は大変素晴らしいものがあると思います。発電機小型化のため高回転化した技術、小型モーターで、200Vを超える高電圧をうまく活用できるモーター技術も、電動機のブレークスルーになったのではないでしょうか。

▶︎エアロディベロップジャパン株式会社

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